問題文正答率:50.00%
第1問 補助に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- 家庭裁判所は,精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分であり保佐開始の原因がある者についても,補助開始の審判をすることができる。
- 本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには,家庭裁判所が相当と認める場合を除き,本人の同意がなければならない。
- 補助開始の原因が消滅したときは,家庭裁判所は,職権で補助開始の審判を取り消すことができる。
- 補助人の同意を得なければならない行為について,補助人が被補助人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは,家庭裁判所は,被補助人の請求により,補助人の同意に代わる許可を与えることができる。
- 家庭裁判所が特定の法律行為について補助人に代理権を付与する旨の審判をした場合であっても,被補助人は,その法律行為を自らすることができる。
選択肢
ア 誤り。「精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、4親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判をすることができる。ただし、第7条又は第11条に規定する原因がある者については、この限りではない」(第15条1項)。したがって、同条ただし書により、精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分で保佐開始の原因がある者については、補助開始の審判をすることはできない。
オ 正しい。「家庭裁判所は、第15条1項本文に規定する者又は補助人若しくは補助監督人の請求によって、被補助人のために特定の法律行為について補助人に代理権を付与する旨の審判をすることができる」(876条の9第1項)。「特定の法律行為について補助人に代理権が付与」されても、被補助人の当該行為についての行為能力が制限されることはない。したがって、設問の場合、被補助人は、その法律行為を自らすることができる。
イ 誤り。「本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない」(15条2項)。「家庭裁判所が相当と認める場合を除き」という規定はない。
ウ 誤り。「第15条第1項本文に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、4親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判を取り消さなければならない」(18条1項)。家庭裁判所の職権で、補助開始の審判を取り消すことができるという規定はない。
ウ 誤り。「第15条第1項本文に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、4親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判を取り消さなければならない」(18条1項)。家庭裁判所の職権で、補助開始の審判を取り消すことができるという規定はない。
エ 正しい。「補助人の同意を得なければならない行為について、補助人が被補助人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被補助人の請求により、補助人の同意に代わる許可を与えることができる」(17条3項)。
エ 正しい。「補助人の同意を得なければならない行為について、補助人が被補助人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被補助人の請求により、補助人の同意に代わる許可を与えることができる」(17条3項)。
オ 正しい。「家庭裁判所は、第15条1項本文に規定する者又は補助人若しくは補助監督人の請求によって、被補助人のために特定の法律行為について補助人に代理権を付与する旨の審判をすることができる」(876条の9第1項)。「特定の法律行為について補助人に代理権が付与」されても、被補助人の当該行為についての行為能力が制限されることはない。したがって、設問の場合、被補助人は、その法律行為を自らすることができる。
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問題文正答率:50.00%
第2問 法人に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- 法人は,その定款に記載された目的に含まれない行為であっても,その目的遂行に必要な行為については,権利能力を有する。
- 理事が法人の機関として不法行為を行い,法人が不法行為責任を負う場合には,その理事は,個人として不法行為責任を負うことはない。
- 法人の代表者が職務権限外の取引行為をし,当該行為が外形的に当該法人の職務行為に属すると認められる場合であっても,相手方がその職務行為に属さないことを知っていたときは,法人は,代表者の当該行為に基づいて相手方に生じた損害の賠償責任を負わない。
- 外国人が享有することのできない権利であっても,認許された外国法人は,日本において成立する同種の法人と同様に,その権利を取得することができる。
- 設立登記が成立要件となっている法人について,設立登記がされていなくても,法人としての活動の実態がある場合には,予定されている定款の目的の範囲内での権利能力が認められる。
選択肢
ア 正しい。最判昭和27年2月15日は、「定款に記載された目的自体包含されない行為であっても目的遂行に必要な行為は、また、社団の目的の範囲に属する」とする。したがって、法人は、その定款に記載された目的に含まれない行為であっても、その目的遂行に必要な行為については、権利能力を有する。
ウ 誤り。最判昭和50年7月14日は、地方公共団体について、理事その他の代理人の行為についての損害賠償責任を規定した民法44条1項(平成18年改正により削除)が類推適用されることを前提にして、「行為の外形から見てその職務行為に属するものと認められる場合であっても、相手方において、右行為がその職務行為に属さないことを知っていたか、又はこれを知らないことにつき重大な過失があったときは、当該地方公共団体は相手方に対して損害賠償の責任を負わない」とする。したがって、設問の場合、法人は、代表者の当該行為に基づいて相手方に生じた損害の賠償責任を負わない。
ア 正しい。最判昭和27年2月15日は、「定款に記載された目的自体包含されない行為であっても目的遂行に必要な行為は、また、社団の目的の範囲に属する」とする。したがって、法人は、その定款に記載された目的に含まれない行為であっても、その目的遂行に必要な行為については、権利能力を有する。
オ 誤り。設立登記が成立要件となっている法人(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律22条、163条等)について、設立登記をすることなく、権利能力が認められることはない。
イ 誤り。最判昭和49年2月28日は、「株式会社の代表取締役が、その職務を行うにつき不法行為をして他人に損害を加えたため、右株式会社がその賠償の責に任ずる場合には、右代表取締役も、個人として不法行為責任を負う」とする。したがって、設問の場合、その理事は、個人として不法行為責任を負う。
ウ 誤り。最判昭和50年7月14日は、地方公共団体について、理事その他の代理人の行為についての損害賠償責任を規定した民法44条1項(平成18年改正により削除)が類推適用されることを前提にして、「行為の外形から見てその職務行為に属するものと認められる場合であっても、相手方において、右行為がその職務行為に属さないことを知っていたか、又はこれを知らないことにつき重大な過失があったときは、当該地方公共団体は相手方に対して損害賠償の責任を負わない」とする。したがって、設問の場合、法人は、代表者の当該行為に基づいて相手方に生じた損害の賠償責任を負わない。
イ 誤り。最判昭和49年2月28日は、「株式会社の代表取締役が、その職務を行うにつき不法行為をして他人に損害を加えたため、右株式会社がその賠償の責に任ずる場合には、右代表取締役も、個人として不法行為責任を負う」とする。したがって、設問の場合、その理事は、個人として不法行為責任を負う。
エ 誤り。「前項の規定により認許された外国法人は、日本において成立する同種の法人と同一の私権を共有する。ただし、外国人が享有することのできない権利及び法律又は条約中に特別の規定がある権利については、この限りではない」(35条2項ただし書)。したがって、認許された外国法人も、「外国人が享有することのできない権利」を取得することはできない。
エ 誤り。「前項の規定により認許された外国法人は、日本において成立する同種の法人と同一の私権を共有する。ただし、外国人が享有することのできない権利及び法律又は条約中に特別の規定がある権利については、この限りではない」(35条2項ただし書)。したがって、認許された外国法人も、「外国人が享有することのできない権利」を取得することはできない。
オ 誤り。設立登記が成立要件となっている法人(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律22条、163条等)について、設立登記をすることなく、権利能力が認められることはない。
解説・コメント
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問題文正答率:50.00%
第3問 錯誤に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- 錯誤を理由とする意思表示の取消しの可否について,錯誤の重要性は,表意者を基準として判断される。
- AのBに対する意思表示がAの錯誤を理由として取り消すことができるものである場合,Bも,Aの錯誤を理由としてAの意思表示を取り消すことができる。
- 負担のない贈与について贈与者であるAの錯誤を理由とする取消しがされたが,受贈者であるBが既に当該贈与契約に基づいて給付を受けていた場合,Bは,給付を受けた時に当該贈与契約が取り消すことができるものであることを知らなかったときは,現に利益を受けている限度において返還の義務を負う。
- AのBに対する意思表示が錯誤を理由として取り消された場合,Aは,その取消し前に利害関係を有するに至った善意無過失のCに,その取消しを対抗することができない。
- AのBに対する意思表示が錯誤に基づくものであって,その錯誤がAの重大な過失によるものであった場合,Aは,BがAに錯誤があることを知り,又は重大な過失によって知らなかったときを除いて,錯誤を理由としてその意思表示を取り消すことができない。
選択肢
ア 誤り。「意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる」(95条1項柱書)。したがって、錯誤の重要性は、「法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして」判断される。
イ 誤り。「錯誤、詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる」(120条2項)。意思表示の相手方は、取消権者に含まれない。したがって、設問の場合、Bは、Aの錯誤を理由としてAの意思表示を取り消すことはできない。
ア 誤り。「意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる」(95条1項柱書)。したがって、錯誤の重要性は、「法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして」判断される。
オ 誤り。「錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第1項の規定による意思表示の取消しをすることができない。一 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき二 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき」(95条3項)。したがって、設問の場合、Aは、BがAに錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき
の他、BがAと同一の錯誤に陥っていたときにも、錯誤を理由としてその意思表示を取り消すことができる。
イ 誤り。「錯誤、詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる」(120条2項)。意思表示の相手方は、取消権者に含まれない。したがって、設問の場合、Bは、Aの錯誤を理由としてAの意思表示を取り消すことはできない。
ウ 正しい。「前項の規定にかかわらず、無効な無償行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、給付を受けた当時その行為が無効であること(給付を受けた後に前条の規定により初めから無効であったものとみなされた行為にあっては、給付を受けた当時その行為が取り消すことができるものであること)を知らなかったときは、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う」(121条の2第2項)。したがって、設問の場合、Bは、給付を受けた時に当該贈与契約が取り消すことができるものであることを知らなかったときは、現に利益を受けている限度において返還の義務を負う。
ウ 正しい。「前項の規定にかかわらず、無効な無償行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、給付を受けた当時その行為が無効であること(給付を受けた後に前条の規定により初めから無効であったものとみなされた行為にあっては、給付を受けた当時その行為が取り消すことができるものであること)を知らなかったときは、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う」(121条の2第2項)。したがって、設問の場合、Bは、給付を受けた時に当該贈与契約が取り消すことができるものであることを知らなかったときは、現に利益を受けている限度において返還の義務を負う。
エ 正しい。「第1項の規定による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない」(95条4項)。そして、同条項の「第三者」は、錯誤による取消しがなされる前に、新たに法律上の利害関係を有することとなった者をいうものと解されている。したがって、設問の場合、Aは、その取消し前に利害関係を有するに至った善意無過失のCに、その取消しを対抗することができない。
エ 正しい。「第1項の規定による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない」(95条4項)。そして、同条項の「第三者」は、錯誤による取消しがなされる前に、新たに法律上の利害関係を有することとなった者をいうものと解されている。したがって、設問の場合、Aは、その取消し前に利害関係を有するに至った善意無過失のCに、その取消しを対抗することができない。
オ 誤り。「錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第1項の規定による意思表示の取消しをすることができない。一 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき二 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき」(95条3項)。したがって、設問の場合、Aは、BがAに錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき
の他、BがAと同一の錯誤に陥っていたときにも、錯誤を理由としてその意思表示を取り消すことができる。
解説・コメント
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問題文正答率:50.00%
第4問 Aは,Bの代理人と称して,Cとの間でBの所有する土地をCに売却する旨の売買契約を締結したが,実際にはその契約を締結する代理権を有していなかった。この事例に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- AがCに対する無権代理人の責任を負う場合,Aは売買契約の履行をするか,又は損害賠償責任を負うかを自ら選択することができる。
- Bが売買契約を追認した場合,AはCに対する無権代理人の責任を負わない。
- 代理権を有しないことを知らないことにつきCに過失がある場合,Aは,自己に代理権がないことを知っていたときであっても,Cに対する無権代理人の責任を負わない。
- 売買契約の締結後にAがDと共にBを相続した場合,Dの追認がない限り,Aの相続分に相当する部分においても,売買契約は当然に有効となるものではない。
- 売買契約の締結後にBがAを単独で相続した場合,売買契約は当該相続により当然に有効となるものではない。
選択肢
ア 誤り。「他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う」(117条1項)。したがって、設問の場合、Aは売買契約の履行をするか、又は損害賠償責任を負うかを自ら選択することはできない。
イ 正しい。「他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う」(117条1項)。したがって、設問の場合、AはCに対する無権代理人の責任を負わない。
ア 誤り。「他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う」(117条1項)。したがって、設問の場合、Aは売買契約の履行をするか、又は損害賠償責任を負うかを自ら選択することはできない。
ウ 誤り。「前項の責任は、次に掲げる場合には、適用しない。二 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が過失によって知らなかったとき。ただし、他人の代理人として契約をした者が自己に代理権がないことを知っていたときは、この限りでない」(117条2項2号)。したがって、設問の場合、Aが、自己に代理権がないことを知っていたときは、Cに対する無権代理人の責任を負う。
イ 正しい。「他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う」(117条1項)。したがって、設問の場合、AはCに対する無権代理人の責任を負わない。
エ 最判平成5年1月21日は、「無権代理人が本人を他の相続人と共に共同相続した場合において、無権代理行為を追認する権利は、その性質上相続人全員に不可分に帰属する」「他の共同相続人全員が無権代理行為の追認をしている場合に無権代理人が追認を拒絶することは信義則上許されないとしても、他の共同相続人全員の追認がない限り、無権代理行為は、無権代理人の相続分に相当する部分においても、当然に有効となるものではない」とする。したがって、設問の場合、Dの追認がない限り、Aの相続分に相当する部分においても、売買契約は当然に有効となるものではない。
ウ 誤り。「前項の責任は、次に掲げる場合には、適用しない。二 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が過失によって知らなかったとき。ただし、他人の代理人として契約をした者が自己に代理権がないことを知っていたときは、この限りでない」(117条2項2号)。したがって、設問の場合、Aが、自己に代理権がないことを知っていたときは、Cに対する無権代理人の責任を負う。
オ 正しい。最判昭和37年4月20日は、「本人が無権代理人を相続した場合」「相続人たる本人が被相続人の無権代理行為の追認を拒絶しても、何ら信義に反するところはないから、被相続人の無権代理行為は一般に本人の相続により当然に有効となるものではない」とする。したがって、設問の場合、売買契約は当該相続により当然に有効となるものではない。
エ 最判平成5年1月21日は、「無権代理人が本人を他の相続人と共に共同相続した場合において、無権代理行為を追認する権利は、その性質上相続人全員に不可分に帰属する」「他の共同相続人全員が無権代理行為の追認をしている場合に無権代理人が追認を拒絶することは信義則上許されないとしても、他の共同相続人全員の追認がない限り、無権代理行為は、無権代理人の相続分に相当する部分においても、当然に有効となるものではない」とする。したがって、設問の場合、Dの追認がない限り、Aの相続分に相当する部分においても、売買契約は当然に有効となるものではない。
オ 正しい。最判昭和37年4月20日は、「本人が無権代理人を相続した場合」「相続人たる本人が被相続人の無権代理行為の追認を拒絶しても、何ら信義に反するところはないから、被相続人の無権代理行為は一般に本人の相続により当然に有効となるものではない」とする。したがって、設問の場合、売買契約は当該相続により当然に有効となるものではない。
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第5問 消滅時効に関する次のアからオまでの各記述のうち,誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- 債務不履行に基づく損害賠償請求権は,債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しない場合,時効によって消滅する。
- 詐欺を理由とする取消権は,その行為の時から5年間行使しない場合,時効によって消滅する。
- 不法行為に基づく損害賠償請求権は,不法行為の時から20年間行使しない場合,時効によって消滅する。
- 10年より短い時効期間の定めのある権利が確定判決によって確定した場合,その時効期間は,短い時効期間の定めによる。
- 定期金の債権は,債権者が定期金の債権から生ずる金銭その他の物の給付を目的とする各債権を行使することができることを知った時から10年間行使しない場合,時効によって消滅する。
選択肢
ア 正しい。「債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。一 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき」(166条1項1号)。
ウ 正しい。「不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。二 不法行為の時から20年間行使しないとき」(724条2号)。
ア 正しい。「債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。一 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき」(166条1項1号)。
オ 正しい。「定期金の債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。一 債権者が定期金の債権から生ずる金銭その他の物の給付を目的とする各債権を行使することをできることを知った時から10年間行使しないとき」(168条1項1号)。
イ 誤り。「取消権は、追認をすることができる時から5年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から20年を経過したときも、同様とする」(126条)。
エ 誤り。「確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、10年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、10年間とする」(169条1項)。
イ 誤り。「取消権は、追認をすることができる時から5年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から20年を経過したときも、同様とする」(126条)。
オ 正しい。「定期金の債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。一 債権者が定期金の債権から生ずる金銭その他の物の給付を目的とする各債権を行使することをできることを知った時から10年間行使しないとき」(168条1項1号)。
ウ 正しい。「不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。二 不法行為の時から20年間行使しないとき」(724条2号)。
エ 誤り。「確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、10年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、10年間とする」(169条1項)。
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問題文正答率:50.00%
第6問 物権的請求権に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- Aが地上権を有する甲土地に無断でBがその所有する自動車を放置した場合,Aは,Bに対し,地上権に基づく妨害排除請求権の行使として自動車を撤去するよう求めることはできない。
- Aが所有する鉄塔が自然災害により傾き,鉄塔に隣接するBの所有する甲建物を損傷させるおそれが生じた場合において,Bが所有権に基づく妨害予防請求権の行使として甲建物を損傷させないための措置を講ずるよう求めたときは,Aは,過去に実際に一度でも甲建物を損傷させたことがないことを理由としてBの請求を拒むことができる。
- Aの所有する自動車がBの所有する山林に無断で放置され,20年が経過した場合において,BがAに対して所有権に基づく妨害排除請求権の行使として自動車の撤去を求めたときは,Aは,妨害排除請求権の消滅時効を援用してBの請求を拒むことができる。
- Aが,A所有の甲土地に洪水のため流されてきた自動車の所有者であるBに対し,所有権に基づく妨害排除請求権の行使として自動車を撤去するよう求めた場合,Bは,所有権侵害について故意過失がないことを主張立証しても,Aの請求を拒むことはできない。
- Aの所有する甲土地に無断でBがその所有する自転車を放置した場合において,AがBに対して所有権に基づく妨害排除請求権の行使として自転車を撤去するよう求めたときは,Bは,自己が未成年者であることを理由としてAの請求を拒むことはできない。
選択肢
ア 誤り。物権的請求権は、明文の規定はないが、物権の内容を実現することを妨げられ、又はそのおそれがある場合に認められる。具体的には、物権的返還請求権、物権的妨害排除請求権、物権的妨害予防請求権がある。そして、「地上権者は、他人の土地において工作物又は竹木を所有するため、その土地を使用する権利を有する」(265条)。設問の場合、地上権の内容を実現することを妨げられているといえるので、Aは、Bに対し、地上権に基づく妨害排除請求権の行使として自動車を撤去するよう求めることができる。
イ 誤り。妨害予防請求権は、物権侵害のおそれがある場合に認められる権利である。そして、過去に物権侵害を生じさせたかことがあるか否かとは無関係に発生する。したがって、設問の場合、Aは、過去に実際に一度でも甲建物を損傷させたことがないことを理由としてBの請求を拒むことはできない。
ア 誤り。物権的請求権は、明文の規定はないが、物権の内容を実現することを妨げられ、又はそのおそれがある場合に認められる。具体的には、物権的返還請求権、物権的妨害排除請求権、物権的妨害予防請求権がある。そして、「地上権者は、他人の土地において工作物又は竹木を所有するため、その土地を使用する権利を有する」(265条)。設問の場合、地上権の内容を実現することを妨げられているといえるので、Aは、Bに対し、地上権に基づく妨害排除請求権の行使として自動車を撤去するよう求めることができる。
ウ 誤り。大判大正5年6月23日は、所有権に基づく所有物の返還請求権について、所有権の一作用であり、所有権から発生する独立の権利ではないので、所有権自体と同じく消滅時効によって消滅することはない旨判示する。そして、妨害排除請求権も、返還請求権と同様、所有権の一作用であり、所有権から発生する独立の権利ではないといえる。したがって、設問の場合、Aは、妨害排除請求権の消滅時効を援用してBの請求を拒むことはできない。
イ 誤り。妨害予防請求権は、物権侵害のおそれがある場合に認められる権利である。そして、過去に物権侵害を生じさせたかことがあるか否かとは無関係に認められる。したがって、設問の場合、Aは、過去に実際に一度でも甲建物を損傷させたことがないことを理由としてBの請求を拒むことはできない。
エ 正しい。物権的請求権は、物権の内容を実現することを妨げられ、又はそのおそれがある場合に当然に発生するものであり、相手方の故意・過失は問わないものと解されている。したがって、設問の場合、Bは、所有権侵害について故意過失がないことを主張立証しても、Aの請求を拒むことはできない。
ウ 誤り。大判大正5年6月23日は、所有権に基づく所有物の返還請求権について、所有権の一作用であり、所有権から発生する独立の権利ではないので、所有権自体と同じく消滅時効によって消滅することはない旨判示する。そして、妨害排除請求権も、返還請求権と同様、所有権の一作用であり、所有権から発生する独立の権利ではないといえる。したがって、設問の場合、Aは、妨害排除請求権の消滅時効を援用してBの請求を拒むことはできない。
オ 正しい。物権的請求権は、物権の内容を実現することを妨げられ、又はそのおそれがある場合に当然に発生するものであり、相手方の行為能力の有無は問わないものと解されている。したがって、設問の場合、Bは、自己が未成年者であることを理由としてAの請求を拒むことはできない。
エ 正しい。物権的請求権は、物権の内容を実現することを妨げられ、又はそのおそれがある場合に当然に発生するものであり、相手方の故意・過失は問わないものと解されている。したがって、設問の場合、Bは、所有権侵害について故意過失がないことを主張立証しても、Aの請求を拒むことはできない。
オ 正しい。物権的請求権は、物権の内容を実現することを妨げられ、又はそのおそれがある場合に当然に発生するものであり、相手方の行為能力の有無は問わないものと解されている。したがって、設問の場合、Bは、自己が未成年者であることを理由としてAの請求を拒むことはできない。
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問題文正答率:50.00%
第7問 不動産の物権変動に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- A所有の甲土地をAがBに売却し,その後Aが甲土地をCに対し売却してその旨の登記がされ,更にCが甲土地をDに対し売却してその旨の登記がされた場合において,CがBに対する関係で背信的悪意者に当たるときは,Bは,Dに対し,甲土地の所有権を登記がなくても主張することができる。
- A所有の甲土地をAがBに売却し,その旨の登記がされたが,AがBの詐欺を理由としてAB間の売買契約を取り消した後,この取消しについて善意無過失のCに対しBが甲土地を売却し,その旨の登記がされた場合,Aは,Cに対し,甲土地の所有権を登記がなくても主張することができる。
- A所有の甲土地をAがBに売却し,更にBがCに売却し,それぞれその旨の登記がされた場合において,その後,AがAB間の売買契約をBの甲土地の代金不払を理由に解除したときは,Aは,Bの代金不払の事実を知らないCに対し,甲土地の所有権を主張することができない。
- A所有の甲土地をAがBに売却し,その旨の登記がされた場合において,その後,これより前から所有の意思をもって甲土地を占有していたCについて取得時効が完成したときは,Cは,Bに対し,甲土地の所有権を主張することができない。
- 甲土地を所有していたAが遺言を残さずに死亡し,BとCがAを共同相続し,Cが甲土地をBCの共有とする共同相続登記をしてCの持分にDのために抵当権を設定し,その旨の登記がされた場合において,その後,BCの遺産分割協議により甲土地がBの単独所有とされたときは,Bは,Dに対し,抵当権設定登記の抹消を請求することができない。
選択肢
ア 誤り。最判平成8年10月29日は、「所有者甲から乙が不動産を買い受け、その登記が未了の間に、丙が当該不動産を甲から二重に買い受け、更に丙から転得者丁が買い受けて登記を完了した場合に、たとい丙が背信的悪意者に当たるとしても、丁は、乙に対する関係で丁自身が背信的悪意者と評価されるのでない限り、当該不動産の所有権取得をもって乙に対抗することができる」とする。したがって、設問の場合、CがBに対する関係で背信的悪意者に当たるとしても、DがBに対する関係で背信的悪意者と評価されるのでない限り、Bは、Dに対し、甲土地の所有権を登記なくして主張することはできない。
イ 誤り。大判昭和17年9月30日は、土地の売買が詐欺を理由に取消されたケースで、当該取消により土地所有権は売主に復帰し、初めから買主には移転していなかったことになるが、登記をしなければ取消後の第三者に対抗することができない旨判示している。したがって、設問の場合、Aは、Cに対し、甲土地の所有権を登記なくして主張することはできない。
ア 誤り。最判平成8年10月29日は、「所有者甲から乙が不動産を買い受け、その登記が未了の間に、丙が当該不動産を甲から二重に買い受け、更に丙から転得者丁が買い受けて登記を完了した場合に、たとい丙が背信的悪意者に当たるとしても、丁は、乙に対する関係で丁自身が背信的悪意者と評価されるのでない限り、当該不動産の所有権取得をもって乙に対抗することができる」とする。したがって、設問の場合、CがBに対する関係で背信的悪意者に当たるとしても、DがBに対する関係で背信的悪意者と評価されるのでない限り、Bは、Dに対し、甲土地の所有権を登記なくして主張することはできない。
ウ 正しい。「当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない」(545条1項)。同条項に規定する「第三者」とは、解除された契約から発生した法律効果を基礎にして、解除前に新たに利害関係を有することとなり、対抗要件を備えた者をいうものと解されている。したがって、設問の場合、Aは、Cに対し、甲土地の所有権を主張することができない。
イ 誤り。大判昭和17年9月30日は、土地の売買が詐欺を理由に取消されたケースで、当該取消により土地所有権は売主に復帰し、初めから買主には移転していなかったことになるが、登記をしなければ取消後の第三者に対抗することができない旨判示している。したがって、設問の場合、Aは、Cに対し、甲土地の所有権を登記なくして主張することはできない。
エ 誤り。最判昭和41年11月22日は、「時効が完成しても、その登記がなければ、その後に登記を経由した第三者に対しては時効による権利の取得を対抗することができないのに反し、第三者のなした登記後に時効が完成した場合においては、その第三者に対しては、登記を経由しなくても時効取得をもってこれに対抗することができる」とする。したがって、設問の場合、Cは、Bに対し、甲土地の所有権を主張することができる。
ウ 正しい。「当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない」(545条1項)。同条項に規定する「第三者」とは、解除された契約から発生した法律効果を基礎にして、解除前に新たに利害関係を有することとなり、対抗要件を備えた者をいうものと解されている。したがって、設問の場合、Aは、Cに対し、甲土地の所有権を主張することができない。
オ 正しい。「遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない」(909条)。同条の「第三者」とは、相続開始後遺産分割前に利害関係を有することなった者をいうものと解されている。したがって、設問の場合、Bは、Dに対し、抵当権設定登記の抹消を請求することができない。
エ 誤り。最判昭和41年11月22日は、「時効が完成しても、その登記がなければ、その後に登記を経由した第三者に対しては時効による権利の取得を対抗することができないのに反し、第三者のなした登記後に時効が完成した場合においては、その第三者に対しては、登記を経由しなくても時効取得をもってこれに対抗することができる」とする。したがって、設問の場合、Cは、Bに対し、甲土地の所有権を主張することができる。
オ 正しい。「遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない」(909条)。同条の「第三者」とは、相続開始後遺産分割前に利害関係を有することなった者をいうものと解されている。したがって、設問の場合、Bは、Dに対し、抵当権設定登記の抹消を請求することができない。
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問題文正答率:50.00%
第8問 即時取得に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- Aは,自己所有の宝石をBに売却して現実の引渡しをした。その後,Bは,宝石をCに売却して現実の引渡しをした。さらに,その後,Aは,AB間の売買契約をBの強迫を理由として取り消した。この場合,Cは,即時取得により宝石の所有権を取得することはない。
- 未成年者Aは,自己所有の宝石をBに売却して現実の引渡しをした。その後,Aは,AB間の売買契約を未成年であることを理由として取り消した。この場合,Bが即時取得により宝石の所有権を取得することはない。
- Aは,B所有の宝石をBから賃借して引渡しを受けた上,宝石をCに預けていたが,宝石をDに売却し,Cに対し,宝石を今後Dのために占有するよう命じ,Dがこれを承諾した。この場合,Dは,宝石がA所有であると信じ,かつ,そのことに過失がなかったとしても,即時取得により宝石の所有権を取得することはない。
- Aは,Bが置き忘れた宝石を,自己所有物であると過失なく信じて持ち帰った。この場合,Aが即時取得により宝石の所有権を取得することはない。
- Aは,BがCから賃借していた宝石を盗み,Dに贈与した。Dが宝石をAの所有物であると過失なく信じて現実の引渡しを受けた場合,Bは,宝石の盗難時から2年間は,Dに宝石の回復を請求することができる。
選択肢
ア 誤り。「取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する」(192条)。即時取得が成立するためには、①目的物が動産であること、②前主が無権利者であること占有、③有効な取引行為によって占有を承継したこと、④平穏・公然・善意・無過失で占有を取得したこと、という要件を満たす必要がある。したがって、設問の場合、①②の要件を満たすので、③④の要件が満たされれば、Cが即時取得により宝石の所有権を取得する場合がある。
ウ 誤り。最判昭和57年9月7日は、指図による占有移転を受けることで、192条にいう占有を取得したものといえる旨判示する。したがって、設問の場合、Dは、宝石がAの所有であると信じ、かつ、そのことに過失がなかったときは、即時取得により宝石の所有権取得することができる。
ア 誤り。「取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する」(192条)。即時取得が成立するためには、①目的物が動産であること、②前主が無権利者であること占有、③有効な取引行為によって占有を承継したこと、④平穏・公然・善意・無過失で占有を取得したこと、という要件を満たす必要がある。したがって、設問の場合、①②の要件を満たすので、③④の要件が満たされれば、Cが即時取得により宝石の所有権を取得する場合がある。
エ 正しい。「取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する」(192条)。即時取得が成立するためには、「取引行為」により占有を取得する必要がある。そして、Aは、Bの宝石を取引行為により取得したものではない。したがって、設問の場合、Aが即時取得により宝石の所有権を取得することはない。
イ 正しい。「取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する」(192条)。そして、「取引行為」は、有効である必要があると解されている。したがって、設問の場合、Bが即時取得により宝石の所有権を取得することはない。
ウ 誤り。最判昭和57年9月7日は、指図による占有移転を受けることで、192条にいう占有を取得したものといえる旨判示する。したがって、設問の場合、Dは、宝石がAの所有であると信じ、かつ、そのことに過失がなかったときは、即時取得により宝石の所有権取得することができる。
イ 正しい。「取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する」(192条)。そして、「取引行為」は、有効である必要があると解されている。したがって、設問の場合、Bが即時取得により宝石の所有権を取得することはない。
オ 正しい。「前条の場合において、占有物が盗品又は遺失物であるときは、被害者又は遺失者は、盗難又は遺失の時から2年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる」(193条)。したがって、設問の場合、Bは、宝石の盗難時から2年間は、Dに宝石の回復を請求することができる。
エ 正しい。「取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する」(192条)。即時取得が成立するためには、「取引行為」により占有を取得する必要がある。そして、Aは、Bの宝石を取引行為により取得したものではない。したがって、設問の場合、Aが即時取得により宝石の所有権を取得することはない。
オ 正しい。「前条の場合において、占有物が盗品又は遺失物であるときは、被害者又は遺失者は、盗難又は遺失の時から2年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる」(193条)。したがって、設問の場合、Bは、宝石の盗難時から2年間は、Dに宝石の回復を請求することができる。
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問題文正答率:50.00%
第9問 占有の訴えに関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- Aは自己の所有するコピー機をBに賃貸していたが,Bはコピー機の賃貸借契約が終了した後もコピー機を使用し続け,Aに返還しなかった。この場合,Aは,Bに対し,占有回収の訴えによりコピー機の返還を請求することができる。
- Aは,底面に「所有者A」と印字されたシールを貼ってある自己所有のパソコンをBに窃取された。その後,Bは,パソコンの外観に変更を加えることなく,パソコンを盗難の事情を知らないCに譲渡した。この場合,Aは,Cに対し,占有回収の訴えにより同パソコンの返還を請求することはできない。
- Aは自己の所有する工作機械をBに賃貸していたが,Bは,工作機械の賃貸借契約継続中に工作機械をCに窃取された。この場合,Bは,Aから独立して,Cに対して占有回収の訴えを提起することができる。
- Aは,自己の所有する自転車をBに詐取された。この場合,Aは,Bに対し,占有回収の訴えにより自転車の返還を請求することができる。
- Aは,別荘地に土地を所有していた。その隣地の所有者であったBは,Aに無断で境界を越えてA所有の土地に塀を作り始め,2年後にその塀が完成した。Aは,この時点において,Bに対し,占有保持の訴えによりその塀の撤去を請求することはできない。
選択肢
ア 誤り。「占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる」(200条1項)。占有回収の訴えが認められるためには、「占有を奪われた」ことが必要である。そして、Aは自己の所有するコピー機をBに賃貸しており、「占有を奪われた」とはいえない。したがって、設問の場合、Aは、Bに対し、占有回収の訴えによりコピー機の返還を請求することができない。
イ 正しい。「占有回収の訴えは、占有を侵奪した者の特定承継人に対して提起することができない。ただし、その承継人が侵奪の事実を知っていたときは、この限りでない」(200条2項)。最判昭和56年3月19日は、「侵奪の事実を知っていた」といえるためには、承継人が何らかの形で占有の侵奪があったことについて認識を有している必要があり、占有の侵奪があったかもしれないと考えていても、それを単なる可能性として認識していただけでは足りない旨判示する。したがって、設問の場合、Aは、Cに対し、占有回収の訴えにより同パソコンの返還を請求することはできない。
ア 誤り。「占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる」(200条1項)。占有回収の訴えが認められるためには、「占有を奪われた」ことが必要である。そして、Aは自己の所有するコピー機をBに賃貸しており、「占有を奪われた」とはいえない。したがって、設問の場合、Aは、Bに対し、占有回収の訴えによりコピー機の返還を請求することができない。
エ 誤り。「占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる」(200条1項)。占有回収の訴えが認められるためには、「占有を奪われた」ことが必要である。そして、大判大正11年11月27日は、「占有を奪われた」とは、占有者の意思に基づかず占有を奪われたことをいい、他人の欺罔によって占有移転の意思が生じた場合を含まない旨判示している。したがって、設問の場合、Aは、Bに対し、占有回収の訴えにより自転車の返還を請求することができない。
イ 正しい。「占有回収の訴えは、占有を侵奪した者の特定承継人に対して提起することができない。ただし、その承継人が侵奪の事実を知っていたときは、この限りでない」(200条2項)。最判昭和56年3月19日は、「侵奪の事実を知っていた」といえるためには、承継人が何らかの形で占有の侵奪があったことについて認識を有している必要があり、占有の侵奪があったかもしれないと考えていても、それを単なる可能性として認識していただけでは足りない旨判示する。したがって、設問の場合、Aは、Cに対し、占有回収の訴えにより同パソコンの返還を請求することはできない。
ウ 正しい。「占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる」(200条1項)。そして、Bは、賃借人であるから、「占有者」である。したがって、設問の場合、Bは、Aから独立して、Cに対して占有回収の訴えを提起することができる。
ウ 正しい。「占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる」(200条1項)。そして、Bは、賃借人であるから、「占有者」である。したがって、設問の場合、Bは、Aから独立して、Cに対して占有回収の訴えを提起することができる。
オ 正しい。「占有保持の訴えは、妨害の存する間又はその消滅した後1年以内に提起しなければならない。ただし、工事により占有物に損害を生じた場合において、その工事に着手した時から1年を経過し、又はその工事が完成したときは、これを提起することができない」(201条1項)。したがって、設問の場合、Aは、Bに対し、占有保持の訴えによりその塀の撤去を請求することはできない。
エ 誤り。「占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる」(200条1項)。占有回収の訴えが認められるためには、「占有を奪われた」ことが必要である。そして、大判大正11年11月27日は、「占有を奪われた」とは、占有者の意思に基づかず占有を奪われたことをいい、他人の欺罔によって占有移転の意思が生じた場合を含まない旨判示している。したがって、設問の場合、Aは、Bに対し、占有回収の訴えにより自転車の返還を請求することができない。
オ 正しい。「占有保持の訴えは、妨害の存する間又はその消滅した後1年以内に提起しなければならない。ただし、工事により占有物に損害を生じた場合において、その工事に着手した時から1年を経過し、又はその工事が完成したときは、これを提起することができない」(201条1項)。したがって、設問の場合、Aは、Bに対し、占有保持の訴えによりその塀の撤去を請求することはできない。
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問題文正答率:50.00%
第10問 地上権に関する次のアからオまでの各記述のうち,誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- 地上権者は,地上権設定者に対し,その地上権の設定登記を請求する権利を有する。
- 約定による地上権の存続期間は,20年以上50年以下の範囲内で定めなければならない。
- 地上権は,工作物又は竹木を所有する目的で土地を使用する権利である。
- 地下又は空間は,工作物を所有するため,上下の範囲を定めて地上権の目的とすることができる。
- 地上権は,地上権設定者の承諾を得なければ,譲渡することができない。
選択肢
ア 正しい。「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成16年法律第123号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない」(177条)。不動産に関する物権を有する者は、当該物権の設定者に対し、登記申請に協力すべきこととを求める権利が認められる。したがって、地上権者は、地上権設定者に対し、その地上権の設定登記を請求する権利を有する。
イ 誤り。地上権に関して、その存続期間を20年以上50年以下の範囲内で定めなければならないとする規定はない。なお、永小作権に関しては、「永小作権の存続期間は、20年以上50年以下とする」(278条1項前段)との規定がある。
ア 正しい。「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成16年法律第123号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない」(177条)。不動産に関する物権を有する者は、当該物権の設定者に対し、登記申請に協力すべきこととを求める権利が認められる。したがって、地上権者は、地上権設定者に対し、その地上権の設定登記を請求する権利を有する。
エ 正しい。「地下又は空間は、工作物を所有するため、上下の範囲を定めて地上権の目的とすることができる」(269条の2第1項前段)。
イ 誤り。地上権に関して、その存続期間を20年以上50年以下の範囲内で定めなければならないとする規定はない。なお、永小作権に関しては、「永小作権の存続期間は、20年以上50年以下とする」(278条1項前段)との規定がある。
オ 誤り。地上権は、物権として、地上権設定者の承諾を得なくても、自由に譲渡することができる。なお、債権である賃借権を譲渡するには、賃貸人の承諾が必要となる(612条1項)。
ウ 正しい。「地上権者は、他人の土地において工作物又は竹木を所有するため、その土地を使用する権利を有する」(265条)。
エ 正しい。「地下又は空間は、工作物を所有するため、上下の範囲を定めて地上権の目的とすることができる」(269条の2第1項前段)。
ウ 正しい。「地上権者は、他人の土地において工作物又は竹木を所有するため、その土地を使用する権利を有する」(265条)。
オ 誤り。地上権は、物権として、地上権設定者の承諾を得なくても、自由に譲渡することができる。なお、債権である賃借権を譲渡するには、賃貸人の承諾が必要となる(612条1項)。
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問題文正答率:50.00%
第11問 先取特権に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- 法人に対して電気料金債権を有する者は,供給した電気がその代表者及びその家族の生活に使用されていた場合,法人の財産について一般の先取特権を有する。
- 旅館に宿泊客が持ち込んだ手荷物がその宿泊客の所有物でなく他人の所有物であった場合,旅館主は,その手荷物がその宿泊客の所有物であると過失なく信じたときであっても,その手荷物について旅館の宿泊の先取特権を行使することはできない。
- 動産の売主は,買主がその動産の転売によって得た売買代金債権につき,買主の一般債権者が当該売買代金債権を差し押さえた後は,動産の売買の先取特権に基づく物上代位権を行使することはできない。
- 不動産の工事の先取特権の効力を保存するためには,工事を始める前にその費用の予算額を登記しなければならない。
- 建物賃貸借において,賃借権が適法に譲渡され,譲受人が建物に動産を備え付けた場合,賃貸借関係から生じた賃貸人の債権が譲渡前に発生していたものであっても,不動産の賃貸の先取特権はその動産に及ぶ。
選択肢
ア 誤り。最判昭和46年10月21日は、310に規定する「債務者」は、自然人に限られ、法人は含まれない旨判示する。したがって、法人に対して電気料金債権を有する者は、設問の場合であっても、法人の財産について一般の先取特権を有しない。
イ 誤り。「旅館の宿泊の先取特権は、宿泊客が負担すべき宿泊料及び飲食料に関し、その旅館に在るその宿泊客の手荷物について存在する」(317条)。「第192条から第195条までの規定は、第312条から前条までの規定による先取特権について準用する」(319条)。「取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する」(192条)。したがって、設問の場合、旅館主は、その手荷物がその宿泊客の所有物であると過失なく信じたときは、その手荷物について旅館の宿泊の先取特権を行使することができる。
ア 誤り。最判昭和46年10月21日は、310に規定する「債務者」は、自然人に限られ、法人は含まれない旨判示する。したがって、法人に対して電気料金債権を有する者は、設問の場合であっても、法人の財産について一般の先取特権を有しない。
オ 正しい。「建物の賃貸人の先取特権は、賃借人がその建物に備え付けた動産について存在する」(313条2項)。「賃借権の譲渡又は転貸の場合には、賃貸人の先取特権は、譲受人又は転借人の動産にも及ぶ」(314条前段)。したがって、設問の場合、賃貸借関係から生じた賃貸人の債権が譲渡前に発生していたものであっても、不動産の賃貸の先取特権はその動産に及ぶ。
イ 誤り。「旅館の宿泊の先取特権は、宿泊客が負担すべき宿泊料及び飲食料に関し、その旅館に在るその宿泊客の手荷物について存在する」(317条)。「第192条から第195条までの規定は、第312条から前条までの規定による先取特権について準用する」(319条)。「取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する」(192条)。したがって、設問の場合、旅館主は、その手荷物がその宿泊客の所有物であると過失なく信じたときは、その手荷物について旅館の宿泊の先取特権を行使することができる。
ウ 誤り。最判昭和60年7月19日は、「物上代位の目的となる債権」「について一般債権者が差押又は仮差押の執行をしたにすぎないときは、その後に先取特権者が目的債権に対し物上代位権を行使することを妨げられるものではない」とする。したがって、設問の場合、動産の売主は、買主の一般債権者が当該売買代金債権を差し押さえた後でも、動産の売買の先取特権に基づく物上代位権を行使することができる。
ウ 誤り。最判昭和60年7月19日は、「物上代位の目的となる債権」「について一般債権者が差押又は仮差押の執行をしたにすぎないときは、その後に先取特権者が目的債権に対し物上代位権を行使することを妨げられるものではない」とする。したがって、設問の場合、動産の売主は、買主の一般債権者が当該売買代金債権を差し押さえた後でも、動産の売買の先取特権に基づく物上代位権を行使することができる。
エ 正しい。「不動産の工事の先取特権の効力を保存するためには、工事を始める前にその費用の予算額を登記しなければならない」(338条1項前段)。
エ 正しい。「不動産の工事の先取特権の効力を保存するためには、工事を始める前にその費用の予算額を登記しなければならない」(338条1項前段)。
オ 正しい。「建物の賃貸人の先取特権は、賃借人がその建物に備え付けた動産について存在する」(313条2項)。「賃借権の譲渡又は転貸の場合には、賃貸人の先取特権は、譲受人又は転借人の動産にも及ぶ」(314条前段)。したがって、設問の場合、賃貸借関係から生じた賃貸人の債権が譲渡前に発生していたものであっても、不動産の賃貸の先取特権はその動産に及ぶ。
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問題文正答率:50.00%
第12問 債務者Aは債権者BのためにAの所有する不動産甲に抵当権を設定し,その旨の登記がされた。この場合における抵当権の消滅に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- Aは,抵当権を実行することができる時から20年が経過すれば,被担保債権が消滅していなくても,抵当権が時効により消滅したと主張することができる。
- 甲について,その後,AがCのために抵当権を設定し,その旨の登記がされた場合において,BがAから甲を買い受けたときは,Bの抵当権は消滅しない。
- Aの一般債権者が甲につき強制競売の申立てをし,当該強制競売手続において甲が売却されたときは,Bの抵当権は消滅する。
- 甲について,その後,Aから譲渡担保権の設定を受けたDは,譲渡担保権の実行前であっても,抵当権消滅請求をすることにより,Bの抵当権を消滅させることができる。
- 甲が建物である場合において,Aが故意に甲を焼失させたときは,Bの抵当権は消滅しない。
選択肢
ア 誤り。「抵当権は、債務者及び抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ、時効によって消滅しない」(396条)。したがって、設問の場合、Aは、被担保債権が消滅していなければ、抵当権が時効により消滅したと主張することはできない。
エ 誤り。「抵当不動産の第三取得者は、第383条の定めるところにより、抵当権消滅請求をすることができる」(379条)。最判平成7年11月10日は、「譲渡担保権者は、担保権を実行して確定的に抵当不動産の所有権を取得しない限り、民法378条所定の滌除権者たる第三取得者には該当せず、抵当権を滌除することができない」とする。本判例は、平成15年改正前の滌除に関するものであるが、抵当権消滅請求についても同様と解されている。したがって、設問の場合、Dは、譲渡担保権の実行前には、抵当権消滅請求をすることにより、Bの抵当権を消滅させることはできない。
ア 誤り。「抵当権は、債務者及び抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ、時効によって消滅しない」(396条)。したがって、設問の場合、Aは、被担保債権が消滅していなければ、抵当権が時効により消滅したと主張することはできない。
オ 誤り。抵当権の目的となっている物が滅失した場合、抵当権は消滅する。したがって、設問の場合、Aが故意に甲を焼失させたときでも、Bの抵当権は消滅する。
イ 正しい。「同一物について所有権及び他の物件が同一人に帰属したときは、当該他の物権は消滅する。ただし、その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない」(179条1項)。したがって、設問の場合、甲がCの権利の目的となっているので、BがAから甲を買い受けても、Bの抵当権は消滅しない。
ウ 正しい。「不動産の上に存する先取特権、使用及び収益をしない旨の定めのある質権並びに抵当権は、売却により消滅する」(民事執行法59条1項)。
イ 正しい。「同一物について所有権及び他の物件が同一人に帰属したときは、当該他の物権は消滅する。ただし、その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない」(179条1項)。したがって、設問の場合、甲がCの権利の目的となっているので、BがAから甲を買い受けても、Bの抵当権は消滅しない。
オ 誤り。抵当権の目的となっている物が滅失した場合、抵当権は消滅する。したがって、設問の場合、Aが故意に甲を焼失させたときでも、Bの抵当権は消滅する。
ウ 正しい。「不動産の上に存する先取特権、使用及び収益をしない旨の定めのある質権並びに抵当権は、売却により消滅する」(民事執行法59条1項)。
エ 誤り。「抵当不動産の第三取得者は、第383条の定めるところにより、抵当権消滅請求をすることができる」(379条)。最判平成7年11月10日は、「譲渡担保権者は、担保権を実行して確定的に抵当不動産の所有権を取得しない限り、民法378条所定の滌除権者たる第三取得者には該当せず、抵当権を滌除することができない」とする。本判例は、平成15年改正前の滌除に関するものであるが、抵当権消滅請求についても同様と解されている。したがって、設問の場合、Dは、譲渡担保権の実行前には、抵当権消滅請求をすることにより、Bの抵当権を消滅させることはできない。
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問題文正答率:50.00%
第13問 債務者Aが債権者Bのために自己の所有する不動産に根抵当権を設定した場合に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- Bは,元本の確定前は,Aに対する他の債権者Cに対してその順位を譲渡することができる。
- Bの根抵当権にDのために転根抵当権が設定され,BがAに転根抵当権の設定の通知をした場合,Aは,元本の確定前であれば,Dの承諾を得なくてもBに弁済することができる。
- 元本の確定前に,Bが根抵当権によって担保されていた債権をEに譲渡した場合,それに伴って根抵当権もEに移転する。
- 後順位抵当権者Fがいる場合,A及びBが元本確定期日を変更するためには,Fの承諾が必要である。
- Bが数個の不動産について根抵当権を有する場合,同一の債権の担保として数個の不動産の上に根抵当権が設定された旨の登記がその設定と同時にされたときを除き,各不動産の代価についてそれぞれの極度額まで優先権を行使することができる。
選択肢
ア 誤り。「元本の確定前においては、根抵当権者は、第376条第1項の規定による根抵当権の処分をすることができない」(398条の11第1項本文)。「抵当権者は、その抵当権を他の債権の担保とし、又は同一の債務者に対する他の債権者の利益のためにその抵当権若しくはその順位を譲渡し、若しくは放棄することができる」(376条1項)。したがって、Bは、元本の確定前は、Aに対しする他の債権者Cに対してその順位を譲渡することはできない。
ウ 誤り。「元本の確定前に、根抵当権者から債権を取得した者は、その債権について根抵当権を行使するすることができない」(398条の7第1項前段)。したがって、元本の確定前に、Bが根抵当権によって担保されていた債権をEに譲渡した場合、それに伴って根抵当権はEに移転しない。
ア 誤り。「元本の確定前においては、根抵当権者は、第376条第1項の規定による根抵当権の処分をすることができない」(398条の11第1項本文)。「抵当権者は、その抵当権を他の債権の担保とし、又は同一の債務者に対する他の債権者の利益のためにその抵当権若しくはその順位を譲渡し、若しくは放棄することができる」(376条1項)。したがって、Bは、元本の確定前は、Aに対しする他の債権者Cに対してその順位を譲渡することはできない。
エ 誤り。「根抵当権の担保すべき元本については、その確定すべき期日を定め又は変更することができる。2 第398条の4第2項の規定は、前項の場合について準用する」(398条の6第1項、2項)。「2 前項の変更をするには、後順位の抵当権者その他の第三者の承諾を得ることを要しない」(398条の4第2項)。したがって、後順位抵当権者Fがいる場合、A及びBが元本確定期日を変更するために、Fの承諾は不要である。
イ 正しい。「元本の確定前においては、根抵当権者は、第376条第1項の規定による根抵当権の処分をすることができない。ただし、その根抵当権を他の債権の担保とすることを妨げない。2 第377条第2項の規定は、前項ただし書の場合において元本の確定前にした弁済については、適用しない」(398条の11第1項、2項)。「主たる債務者が前項の規定により通知を受け、又は承諾したときは、抵当権の処分の利益を受ける者の承諾を得ないでした弁済は、その受益者に対抗することができない」(377条2項)。したがって、設問の場合、Aは、元本の確定前であれば、Dの承諾を得なくてもBに弁済することができる。
エ 誤り。「根抵当権の担保すべき元本については、その確定すべき期日を定め又は変更することができる。2 第398条の4第2項の規定は、前項の場合について準用する」(398条の6第1項、2項)。「2 前項の変更をするには、後順位の抵当権者その他の第三者の承諾を得ることを要しない」(398条の4第2項)。したがって、後順位抵当権者Fがいる場合、A及びBが元本確定期日を変更するために、Fの承諾は不要である。
イ 正しい。「元本の確定前においては、根抵当権者は、第376条第1項の規定による根抵当権の処分をすることができない。ただし、その根抵当権を他の債権の担保とすることを妨げない。2 第377条第2項の規定は、前項ただし書の場合において元本の確定前にした弁済については、適用しない」(398条の11第1項、2項)。「主たる債務者が前項の規定により通知を受け、又は承諾したときは、抵当権の処分の利益を受ける者の承諾を得ないでした弁済は、その受益者に対抗することができない」(377条2項)。したがって、設問の場合、Aは、元本の確定前であれば、Dの承諾を得なくてもBに弁済することができる。
オ 正しい。「数個の不動産につき根抵当権を有する者は、第398条の16の場合を除き、各不動産の代価について、各極度額に至るまで優先権を行使することができる」(398条の18)。「第392条及び第393条の規定は、根抵当権については、その設定と同時に同一の債権の担保として数個の不動産につき根抵当権が設定された旨の登記をした場合に限り、適用する」(398条の16)。
ウ 誤り。「元本の確定前に、根抵当権者から債権を取得した者は、その債権について根抵当権を行使するすることができない」(398条の7第1項前段)。したがって、元本の確定前に、Bが根抵当権によって担保されていた債権をEに譲渡した場合、それに伴って根抵当権はEに移転しない。
オ 正しい。「数個の不動産につき根抵当権を有する者は、第398条の16の場合を除き、各不動産の代価について、各極度額に至るまで優先権を行使することができる」(398条の18)。「第392条及び第393条の規定は、根抵当権については、その設定と同時に同一の債権の担保として数個の不動産につき根抵当権が設定された旨の登記をした場合に限り、適用する」(398条の16)。
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第14問 譲渡担保に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- 所有する土地に譲渡担保権を設定した債務者は,債務の弁済期が経過した後は,債権者が担保権の実行を完了する前であっても,債務の全額を弁済して目的物を受け戻すことはできない。
- 所有する機械に譲渡担保権を設定して譲渡担保権者に現実の引渡しをした債務者Aは,その債務の弁済をする場合,債務の弁済と譲渡担保権者のAに対する目的物の引渡しとの同時履行を主張することはできない。
- 債務者Aが所有する構成部分の変動する在庫商品に債権者Bのために譲渡担保権が設定された後,商品が滅失し,その損害をてん補するための損害保険金請求権をAが取得したときは,Aが営業を継続しているか否かにかかわらず,Bは,当該保険金請求権に対して物上代位権を行使することができる。
- 土地の賃借人が借地上に所有する建物に譲渡担保権を設定した場合,その効力が土地の賃借権に及ぶことはない。
- 譲渡担保権によって担保されるべき債権の範囲は,強行法規や公序良俗に反しない限り,設定契約の当事者間において元本,利息及び遅延損害金について自由に定めることができる。
選択肢
ア 誤り。最判昭和57年1月22日は、「債務者は、債務の弁済期の到来後も、債権者による換価処分が完結するまでは、債務を弁済して目的物を取り戻すことができる」とする。したがって、設問の場合、債務者は、債権者が担保権の実行を完了する前であれば、債務の全額を弁済して目的物を受け戻すことができる。
ウ 誤り。最判平成22年12月2日は、構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保契約において、譲渡担保権設定者が通常の営業を継続している場合には、目的動産の滅失により保険金請求権が発生したとしても、これに対し物上代位権の行使を認める合意がされているなどの特段事情がない限り、譲渡担保権者が当該請求権に対し物上代位権を行使することは許されない旨判示している。したがって、設問の場合、Aが営業を継続していれば、Bは、当該保険金請求権に対して物上代位権を行使することはできない。
ア 誤り。最判昭和57年1月22日は、「債務者は、債務の弁済期の到来後も、債権者による換価処分が完結するまでは、債務を弁済して目的物を取り戻すことができる」とする。したがって、設問の場合、債務者は、債権者が担保権の実行を完了する前であれば、債務の全額を弁済して目的物を受け戻すことができる。
エ 誤り。最判昭和51年9月21日は、「債務者である土地の賃借人がその賃借地上に所有する建物を譲渡担保とした場合には、その建物のみを担保の目的に供したことが明らかであるなど特別の事情がない限り、右譲渡担保の効力は、原則として土地の賃借権に及」ぶとする。
イ 正しい。最判平成6年9月8日は、「債務の弁済と譲渡担保の目的物の返還とは、前者が後者に対し先履行の関係にあり、同時履行の関係に立つものではない」とする。したがって、設問の場合、Aは、債務の弁済と譲渡担保権者のAに対する目的物の引渡しとの同時履行を主張することはできない。
エ 誤り。最判昭和51年9月21日は、「債務者である土地の賃借人がその賃借地上に所有する建物を譲渡担保とした場合には、その建物のみを担保の目的に供したことが明らかであるなど特別の事情がない限り、右譲渡担保の効力は、原則として土地の賃借権に及」ぶとする。
イ 正しい。最判平成6年9月8日は、「債務の弁済と譲渡担保の目的物の返還とは、前者が後者に対し先履行の関係にあり、同時履行の関係に立つものではない」とする。したがって、設問の場合、Aは、債務の弁済と譲渡担保権者のAに対する目的物の引渡しとの同時履行を主張することはできない。
オ 正しい。最判昭和61年7月15日は、「譲渡担保権によって担保されるべき債権の範囲については、強行法規又は公序良俗に反しない限り、その設定契約の当事者間において自由にこれを定めることができ、第三者に対する関係においても、抵当権に関する民法374条又は根抵当権に関する同法398条の3の規定に準ずる制約を受けない」とする。
ウ 誤り。最判平成22年12月2日は、構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保契約において、譲渡担保権設定者が通常の営業を継続している場合には、目的動産の滅失により保険金請求権が発生したとしても、これに対し物上代位権の行使を認める合意がされているなどの特段事情がない限り、譲渡担保権者が当該請求権に対し物上代位権を行使することは許されない旨判示している。したがって、設問の場合、Aが営業を継続していれば、Bは、当該保険金請求権に対して物上代位権を行使することはできない。
オ 正しい。最判昭和61年7月15日は、「譲渡担保権によって担保されるべき債権の範囲については、強行法規又は公序良俗に反しない限り、その設定契約の当事者間において自由にこれを定めることができ、第三者に対する関係においても、抵当権に関する民法374条又は根抵当権に関する同法398条の3の規定に準ずる制約を受けない」とする。
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問題文正答率:50.00%
第15問 AとBは,Aが所有する骨董品甲をBに100万円で売却する旨の売買契約を締結した。この事例に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- 売買契約の締結後,Bが代金100万円を支払ったが,引渡期日前に,AがBに対して甲を引き渡すつもりは全くないと告げ,Bの働きかけにもかかわらず翻意しないときは,Bは,引渡期日の到来を待つことなく,Aに対し,債務の履行に代わる損害の賠償を請求することができる。
- 売買契約の締結の前日に甲が焼失していたときは,当該売買契約は効力を生じない。
- 売買契約の締結後,Bが代金100万円を支払ったが,Aが甲をBに引き渡す前に,甲がBの責めに帰すべき事由により焼失した場合において,Aが甲の焼失による損害をてん補するために支払われる損害保険金70万円を得たときは,Bは,Aに対し,70万円の支払を請求することができる。
- 売買契約の締結後,Aが甲をBに引き渡す前に,甲が第三者の失火により焼失したときは,Bの代金支払債務は当然に消滅する。
- Aが引渡期日に甲の引渡しの提供をしたところ,Bが正当な理由なく受領を拒絶したため,Aの下で甲を保管中に,Aの重過失により甲が滅失したときは,Bは,代金の支払を拒むことができない。
選択肢
ア 正しい。「前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる 二 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき」(同条2項2号)。債務者が、履行拒絶の意思を明確にした場合、履行期を待つことなく、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。したがって、設問の場合、Bは、引渡期日の到来を待つことなく、Aに対し、債務の履行に代わる損害の賠償を請求することができる。
ウ 正しい。「債務者が、その債務の履行が不能となったのと同一の原因により債務の目的物の代償である権利又は利益を取得したときは、債権者は、その受けた損害の額の限度において、債務者に対し、その権利の移転又はその利益の償還を請求することができる」(422条の2)。したがって、設問の場合、Aが甲の消失による損害をてん補するために支払われる損害保険金70万円を得たときは、Bは、Aに対し、70万円の支払を請求することができる。
ア 正しい。「前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる 二 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき」(同条2項2号)。債務者が、履行拒絶の意思を明確にした場合、履行期を待つことなく、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。したがって、設問の場合、Bは、引渡期日の到来を待つことなく、Aに対し、債務の履行に代わる損害の賠償を請求することができる。
エ 誤り。「当事者双方の責めに帰すことができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる」(536条)。したがって、設問の場合、Bの代金支払債務は当然には消滅しない。なお、Bは、代金の支払を拒むことができる。
イ 誤り。「債務の履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして不能であるときは、債権者は、その債務の履行を請求することができない」(412条の2第1項)。本条項は、「履行を請求することができない」としており、契約の効力が生じることを前提としている。したがって、設問の場合、当該売買契約は効力を生じる。
ウ 正しい。「債務者が、その債務の履行が不能となったのと同一の原因により債務の目的物の代償である権利又は利益を取得したときは、債権者は、その受けた損害の額の限度において、債務者に対し、その権利の移転又はその利益の償還を請求することができる」(422条の2)。したがって、設問の場合、Aが甲の消失による損害をてん補するために支払われる損害保険金70万円を得たときは、Bは、Aに対し、70万円の支払を請求することができる。
イ 誤り。「債務の履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして不能であるときは、債権者は、その債務の履行を請求することができない」(412条の2第1項)。本条項は、「履行を請求することができない」としており、契約の効力が生じることを前提としている。したがって、設問の場合、当該売買契約は効力を生じる。
オ 誤り。「債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、その債務の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、履行の提供をした時からその引渡しをするまで、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、その物を保存すれば足りる」(413条1項)。Aには、重過失があるので、「自己の財産に対するのと同一の注意をもって、その物を保存」したとはいえない。したがって、設問の場合、Bは、債務不履行による契約の解除(540条1項、542条1項1号)、又は、履行に代わる損害賠償を請求(415条1項、2項1号)をしたうえで同時履行の抗弁(533条)を主張することで、代金の支払を拒むことができる。
エ 誤り。「当事者双方の責めに帰すことができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる」(536条)。したがって、設問の場合、Bの代金支払債務は当然には消滅しない。なお、Bは、代金の支払を拒むことができる。
オ 誤り。「債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、その債務の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、履行の提供をした時からその引渡しをするまで、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、その物を保存すれば足りる」(413条1項)。Aには、重過失があるので、「自己の財産に対するのと同一の注意をもって、その物を保存」したとはいえない。したがって、設問の場合、Bは、債務不履行による契約の解除(540条1項、542条1項1号)、又は、履行に代わる損害賠償を請求(415条1項、2項1号)をしたうえで同時履行の抗弁(533条)を主張することで、代金の支払を拒むことができる。
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第16問 Aは,その債権者を害することを知りながら,所有する骨董品甲をBに贈与し,その際,Bも甲の贈与がAの債権者を害することを知っていた。この事例におけるAの債権者Cによる詐害行為取消権行使に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- Cが詐害行為取消訴訟を提起する場合,Aを被告としなければならない。
- Bが,甲の贈与がAの債権者を害することを知っていたDに甲を売却し,引き渡した場合,Cは,Dに対し,BD間の甲の売買の取消しを請求することができる。
- Bが,甲の贈与がAの債権者を害することを知っていたDに甲を売却し,引き渡した場合,Cは,Bに対し,AB間の甲の贈与の取消しを請求することができる。
- Cによる詐害行為取消請求を認容する確定判決の効力は,Aの全ての債権者に対してもその効力を有する。
- Bが,甲の贈与がAの債権者を害することを知っていたDに甲を売却し,引き渡した場合において,CのDに対する詐害行為取消請求を認容する判決が確定したときは,Dは,Bに対し,代金の返還を請求することができる。
選択肢
ア 誤り。424条の7第1項は、詐害行為取消請求の訴えの被告を、「受益者」(同条項1号)、「その詐害行為取消請求の相手方である転得者」(同条項2号)としており、債務者には被告適格が認められない。したがって、設問の場合、Cは、Aを被告とすることはできない。
エ 正しい。「詐害行為取消請求を認容する確定判決は、債務者及びその全ての債権者に対してもその効力を有する」(425条)。したがって、設問の場合、Aの全ての債権者に対してもその効力を有する。
ア 誤り。424条の7第1項は、詐害行為取消請求の訴えの被告を、「受益者」(同条項1号)、「その詐害行為取消請求の相手方である転得者」(同条項2号)としており、債務者には被告適格が認められない。したがって、設問の場合、Cは、Aを被告とすることはできない。
オ 誤り。「詐害行為取消請求を認容する確定判決は、債務者及びその全ての債権者に対してもその効力を有する」(425条)。本条の反対解釈として、転得者を被告とする詐害行為取消請求を認容する確定判決は、当該転得者の前者である受益者又は転得者に対しては、その効力が及ばない。したがって、設問の場合、Dは、Bに対し、代金の請求をすることはできない。
イ 誤り。「債権者は、転得者に対する詐害行為取消請求において、債務者がした行為の取消しとともに、転得者が転得した財産の返還を請求することができる」(424条の6第2項前段)。詐害行為取消権は、債務者の行った詐害行為の取消しを目的として行使されるものである。したがって、設問において、Cは、Dに対し、BD間の甲の売買の取消しを請求することはできない。
ウ 正しい。「債権者は、受益者に対する詐害行為取消請求において、債務者がした行為の取消しとともに、その行為によって受益者に移転した財産の返還を請求することができる」(424条の6第1項前段)。したがって、設問の場合、Cは、Bに対し、AB間の甲の贈与の取消しを請求することができる。
イ 誤り。「債権者は、転得者に対する詐害行為取消請求において、債務者がした行為の取消しとともに、転得者が転得した財産の返還を請求することができる」(424条の6第2項前段)。詐害行為取消権は、債務者の行った詐害行為の取消しを目的として行使されるものである。したがって、設問において、Cは、Dに対し、BD間の甲の売買の取消しを請求することはできない。
オ 誤り。「詐害行為取消請求を認容する確定判決は、債務者及びその全ての債権者に対してもその効力を有する」(425条)。本条の反対解釈として、転得者を被告とする詐害行為取消請求を認容する確定判決は、当該転得者の前者である受益者又は転得者に対しては、その効力が及ばない。したがって、設問の場合、Dは、Bに対し、代金の請求をすることはできない。
ウ 正しい。「債権者は、受益者に対する詐害行為取消請求において、債務者がした行為の取消しとともに、その行為によって受益者に移転した財産の返還を請求することができる」(424条の6第1項前段)。したがって、設問の場合、Cは、Bに対し、AB間の甲の贈与の取消しを請求することができる。
エ 正しい。「詐害行為取消請求を認容する確定判決は、債務者及びその全ての債権者に対してもその効力を有する」(425条)。したがって、設問の場合、Aの全ての債権者に対してもその効力を有する。
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問題文正答率:50.00%
第17問 ABCは,Dに対して,60万円の借入金債務(以下「甲債務」という。)を連帯して負担し,負担部分は均等とする合意をしていた。この事例に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- DがAに対して甲債務の支払請求訴訟を提起し,請求を認容する判決が確定した場合において,D及びBが別段の意思を表示していないときは,甲債務の消滅時効は,Bについても判決確定の時から新たにその進行を始める。
- DがCに対して甲債務を免除する意思表示をした場合において,D及びAが別段の意思を表示していないときは,DがAの債務を免除する意思を有していなかったとしても,Dは,Aに対して60万円の支払を請求することはできない。
- 甲債務と相殺適状にある30万円の乙債務をDがCに対して負担している場合において,Cが乙債務につき相殺を援用しない間に,DがAに60万円の支払を請求したときは,Aは,20万円についてその支払を拒むことができる。
- Bは,甲債務の履行期にDに対して18万円を支払った場合,A及びCに求償することはできない。
- 甲債務と相殺適状にある20万円の乙債務をDがCに対して負担している場合において,Aが,Cが甲債務の連帯債務者であることを知りながら,Cに通知せずにDに60万円を支払ってCに求償し,Cが乙債務との相殺をもってAに対抗したときは,Aは,Dに対し,相殺によって消滅すべきであった乙債務20万円の支払を請求することができる。
選択肢
ア 誤り。「第438条、第439条第1項及び前条に規定する場合を除き、連帯債務者の一人について生じた事由は、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。ただし、債権者及び他の連帯債務者の一人が別段の意思を表示したときは、当該他の連帯債務者に対する効力は、その意思に従う」(441条)。そして、時効の更新(147条1項1号、2項)は、相対的効力事由であり、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。したがって、別段の意思表示のない設問の場合、甲債務の消滅時効は、Bについて判決確定の時から新たにその進行を始めることはない。
イ 誤り。「第438条、第439条第1項及び前条に規定する場合を除き、連帯債務者の一人について生じた事由は、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。ただし、債権者及び他の連帯債務者の一人が別段の意思を表示したときは、当該他の連帯債務者に対する効力は、その意思に従う」(441条)。そして、免除(519条)は、相対的効力事由であり、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。したがって、別段の意思表示のない設問の場合、Dは、Aに対して60万円の支払を請求することができる。
ア 誤り。「第438条、第439条第1項及び前条に規定する場合を除き、連帯債務者の一人について生じた事由は、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。ただし、債権者及び他の連帯債務者の一人が別段の意思を表示したときは、当該他の連帯債務者に対する効力は、その意思に従う」(441条)。そして、時効の更新(147条1項1号、2項)は、相対的効力事由であり、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。したがって、別段の意思表示のない設問の場合、甲債務の消滅時効は、Bについて判決確定の時から新たにその進行を始めることはない。
ウ 正しい。連帯債務について、相殺が絶対的効力を有する旨を規定した439条1項を受けて、439条2項は、「前項の債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分の限度において、他の連帯債務者は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる」と規定する。したがって、設問の場合、Cが乙債務につき相殺を援用しない間に、DがAに60万円の支払を請求したときは、Aは、20万円についてその支払を拒むことができる。
イ 誤り。「第438条、第439条第1項及び前条に規定する場合を除き、連帯債務者の一人について生じた事由は、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。ただし、債権者及び他の連帯債務者の一人が別段の意思を表示したときは、当該他の連帯債務者に対する効力は、その意思に従う」(441条)。そして、免除(519条)は、相対的効力事由であり、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。したがって、別段の意思表示のない設問の場合、Dは、Aに対して60万円の支払を請求することができる。
エ 誤り。「連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たときは、その連帯債務者は、その免責を得た額が自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず、他の連帯債務者に対し、その免責を得るために支出した財産の額(その財産の額が共同の免責を得た額を超える場合にあっては、その免責を得た額)のうち各自の負担部分に応じた額の求償権を有する」(442条1項)。したがって、設問の場合、Bは、A及びCそれぞれに6万円を求償することができる。
ウ 正しい。連帯債務について、相殺が絶対的効力を有する旨を規定した439条1項を受けて、439条2項は、「前項の債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分の限度において、他の連帯債務者は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる」と規定する。したがって、設問の場合、Cが乙債務につき相殺を援用しない間に、DがAに60万円の支払を請求したときは、Aは、20万円についてその支払を拒むことができる。
オ 正しい。443条1項は、他の連帯債務者があることを知りながら、連帯債務者の一人が他の連帯債務者に通知しないで弁済をした場合、他の連帯債務者は、債権者に対抗することができる事由を有していたときは、その負担部分について、弁済をした連帯債務者に対抗することができるが、相殺をもって対抗された連帯債務者は、債権者に対し相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求できると規定する。したがって、設問の場合、Aは、Dに対し、相殺によって消滅すべきであった乙債務20万円の支払を請求することができる。
エ 誤り。「連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たときは、その連帯債務者は、その免責を得た額が自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず、他の連帯債務者に対し、その免責を得るために支出した財産の額(その財産の額が共同の免責を得た額を超える場合にあっては、その免責を得た額)のうち各自の負担部分に応じた額の求償権を有する」(442条1項)。したがって、設問の場合、Bは、A及びCそれぞれに6万円を求償することができる。
オ 正しい。443条1項は、他の連帯債務者があることを知りながら、連帯債務者の一人が他の連帯債務者に通知しないで弁済をした場合、他の連帯債務者は、債権者に対抗することができる事由を有していたときは、その負担部分について、弁済をした連帯債務者に対抗することができるが、相殺をもって対抗された連帯債務者は、債権者に対し相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求できると規定する。したがって、設問の場合、Aは、Dに対し、相殺によって消滅すべきであった乙債務20万円の支払を請求することができる。
解説・コメント
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問題文正答率:50.00%
第18問 AはB銀行に預金口座を開設し,金銭を預け入れた。この事例に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- Cが,B銀行のDの預金口座に振込みをするつもりで,誤ってAの預金口座への100万円の振込みをCの取引銀行に依頼し,その振込みが実行された場合,Cは,B銀行に対し,100万円の支払を請求することができる。
- Aが死亡してEとFがAを相続した場合,Eは単独で,B銀行に対し,A名義の預金口座の取引経過の開示を求めることができる。
- AがB銀行に対して有する預金債権について,譲渡はできない旨の特約がされていた場合,AがGとの間で,その預金債権をGに譲渡する契約をしても,Gが特約について悪意又は重過失であったときは,その譲渡は効力を生じない。
- Aの預金口座に係る預金が定期預金の場合,B銀行は,やむを得ない事由がなければ,Aの同意なしに満期前に預金を払い戻すことはできない。
- HがAに対する代金債務の全額をAH間の合意によりB銀行のAの預金口座への振込みによって支払った場合,その債務は,Hの振込みによってAがB銀行に対して同額の預金の払戻しを請求する権利を取得した時に,弁済により消滅する。
選択肢
ア 誤り。最判平成8年4月26日は、「振込依頼人から受取人の銀行の普通預金口座に振込みがあったときは、振込依頼人と受取人との間に振込みの原因となる法律関係が存在するか否かにかかわらず、受取人と銀行との間に振込金額相当の普通預金契約が成立し、受取人が銀行に対して右金額相当の普通預金債権を取得する」とする。したがって、設問の場合、Cは、B銀行に対し、100万円の支払を請求することはできない。
ウ 正しい。「預金口座又は貯金口座に係る預金又は貯金に係る債権(以下「預貯金債権」という。)について当事者がした譲渡制限の意思表示は、第466条第2項の規定にかかわらず、その譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対抗することができる」(466条の5第1項)。「当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示(以下「譲渡制限の意思表示」という。)をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない」(466条2項)。したがって、設問の場合、Gが特約について悪意又は重過失であったときは、その譲渡は効力を生じない。
ア 誤り。最判平成8年4月26日は、「振込依頼人から受取人の銀行の普通預金口座に振込みがあったときは、振込依頼人と受取人との間に振込みの原因となる法律関係が存在するか否かにかかわらず、受取人と銀行との間に振込金額相当の普通預金契約が成立し、受取人が銀行に対して右金額相当の普通預金債権を取得する」とする。したがって、設問の場合、Cは、B銀行に対し、100万円の支払を請求することはできない。
エ 誤り。「第591条第2項及び第3項の規定は、預金又は貯金に係る契約により金銭を寄託した場合について準用する」(666条3項)。「借主は、返還の時期の定めの有無にかかわらず、いつでも返還をすることができる」(591条2項)。したがって、設問の場合、B銀行は、やむを得ない事由がなくても、Aの同意なしに満期前に預金を払い戻すことができる。
イ 正しい。最判平成21年1月22日は、「共同相続人の一人は」「共同相続人全員に帰属する預金契約上の地位に基づき、被相続人名義の預金口座についてその取引経過の開示を求める権利を単独で行使することができる(264条、252条ただし書)」とする。したがって、設問の場合、Eは単独で、B銀行に対し、A名義の預金口座の取引経過の開示を求めることができる。
ウ 正しい。「預金口座又は貯金口座に係る預金又は貯金に係る債権(以下「預貯金債権」という。)について当事者がした譲渡制限の意思表示は、第466条第2項の規定にかかわらず、その譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対抗することができる」(466条の5第1項)。「当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示(以下「譲渡制限の意思表示」という。)をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない」(466条2項)。したがって、設問の場合、Gが特約について悪意又は重過失であったときは、その譲渡は効力を生じない。
イ 正しい。最判平成21年1月22日は、「共同相続人の一人は」「共同相続人全員に帰属する預金契約上の地位に基づき、被相続人名義の預金口座についてその取引経過の開示を求める権利を単独で行使することができる(264条、252条ただし書)」とする。したがって、設問の場合、Eは単独で、B銀行に対し、A名義の預金口座の取引経過の開示を求めることができる。
オ 正しい。「債権者の預金又は貯金の口座に対する払込みによってする弁済は、債権者がその預金又は貯金に係る債権の債務者に対してその払込みに係る金額の払戻しを請求する権利を取得した時に、その効力を生ずる」(477条)。したがって、設問の場合、HのAに対する債務は、Hの振込みによってAがB銀行に対して同額の預金の払戻しを請求する権利を取得した時に、弁済により消滅する。
エ 誤り。「第591条第2項及び第3項の規定は、預金又は貯金に係る契約により金銭を寄託した場合について準用する」(666条3項)。「借主は、返還の時期の定めの有無にかかわらず、いつでも返還をすることができる」(591条2項)。したがって、設問の場合、B銀行は、やむを得ない事由がなくても、Aの同意なしに満期前に預金を払い戻すことができる。
オ 正しい。「債権者の預金又は貯金の口座に対する払込みによってする弁済は、債権者がその預金又は貯金に係る債権の債務者に対してその払込みに係る金額の払戻しを請求する権利を取得した時に、その効力を生ずる」(477条)。したがって、設問の場合、HのAに対する債務は、Hの振込みによってAがB銀行に対して同額の預金の払戻しを請求する権利を取得した時に、弁済により消滅する。
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問題文正答率:50.00%
第19問 弁済による代位に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- 物上保証人は,被担保債権を弁済した場合,代位により取得した被担保債権につき,対抗要件を備えなくても,これを行使することができる。
- 保証人は,被担保債権の一部を弁済したが残債務がある場合,その弁済をした価額の限度において,代位により取得した被担保債権及びその担保権を単独で行使することができる。
- 保証人Aと物上保証人Bとの間で,Aが自己の弁済した全額につき債権者に代位することができる旨の特約をした場合において,弁済をしたAが債権者に代位してB所有の不動産上の第一順位の抵当権を行使するときは,Aはその特約の効力を当該不動産の後順位抵当権者に主張することはできない。
- 債権者が故意に担保を減少させたとしても,そのことについて取引上の社会通念に照らして合理的な理由がある場合,保証人は,その担保の減少に基づく免責を主張することはできない。
- 債権者が過失により担保を減少させた後に物上保証人から抵当目的不動産を譲り受けた者は,物上保証人と債権者との間に債権者の担保保存義務を免除する旨の特約がされていたために担保の減少に基づく免責が生じていなかった場合,債権者に対して担保の減少に基づく自己の免責を主張することはできない。
選択肢
ア 正しい。「債務者のために弁済をした者は、債権者に代位する」(499条)。「第467条の規定は、前条の場合(弁済をするについて正当な利益を有する者が債権者に代位する場合を除く。)について準用する」(500条)。467条は、債権の譲渡の対抗要件に関する規定である。そして、物上保証人は、「弁済をするについて正当な利益を有する者」に該当する。したがって、設問の場合、物上保証人は、対抗要件を備えなくても、これを行使することができる。
ウ 誤り。最判昭和59年5月29日は、物上保証人との間で、501条但書5号(現行501条3項4号)の定める割合と異なる特約をした保証人は、後順位抵当権者等の利害関係人に対してもその特約の効力を主張できる旨判示する。したがって、設問の場合、Aはその特約の効力を当該不動産の後順位抵当権者に主張することができる。
ア 正しい。「債務者のために弁済をした者は、債権者に代位する」(499条)。「第467条の規定は、前条の場合(弁済をするについて正当な利益を有する者が債権者に代位する場合を除く。)について準用する」(500条)。467条は、債権の譲渡の対抗要件に関する規定である。そして、物上保証人は、「弁済をするについて正当な利益を有する者」に該当する。したがって、設問の場合、物上保証人は、対抗要件を備えなくても、これを行使することができる。
オ 正しい。最判平成7年6月23日は、債権者が担保権の設定を受けた担保を減少させたケースで、債権者と担保権設定者との間で担保保存義務免除の特約がある場合に、第三取得者は、免責の効果が生じていない状態の担保の負担がある物件を取得したことになり、債権者に対し、504条にによる免責の効果を主張することができない旨判示する。したがって、設問の場合、債権者に対して担保の減少に基づく自己の免責を主張することはできない。
イ 誤り。「債権の一部について代位弁済があったときは、代位者は、債権者の同意を得て、その弁済をした価額に応じて、債権者とともにその権利を行使することができる」(502条1項)。したがって、設問の場合、保証人は、代位により取得した被担保債権及びその担保権を単独で行使することはできない。
ウ 誤り。最判昭和59年5月29日は、物上保証人との間で、501条但書5号(現行501条3項4号)の定める割合と異なる特約をした保証人は、後順位抵当権者等の利害関係人に対してもその特約の効力を主張できる旨判示する。したがって、設問の場合、Aはその特約の効力を当該不動産の後順位抵当権者に主張することができる。
イ 誤り。「債権の一部について代位弁済があったときは、代位者は、債権者の同意を得て、その弁済をした価額に応じて、債権者とともにその権利を行使することができる」(502条1項)。したがって、設問の場合、保証人は、代位により取得した被担保債権及びその担保権を単独で行使することはできない。
エ 正しい。「弁済をするについて正当な利益を有する者(以下この項において「代位権者」という。)がある場合において、債権者が故意又は過失によってその担保を喪失し、又は減少させたときは、その代位権者は代位をするに当たって担保の喪失又は減少によって償還を受けることができなくなる限度において、その責任を免れる」(504条1項本文)。「前項の規定は、債権者が担保を喪失し、又は減少させたことについて取引上の社会通念に照らして合理的な理由があると認められるときは、適用しない」(同条2項)。したがって、設問の場合、保証人は、その担保の減少に基づく免責を主張することはできない。
エ 正しい。「弁済をするについて正当な利益を有する者(以下この項において「代位権者」という。)がある場合において、債権者が故意又は過失によってその担保を喪失し、又は減少させたときは、その代位権者は代位をするに当たって担保の喪失又は減少によって償還を受けることができなくなる限度において、その責任を免れる」(504条1項本文)。「前項の規定は、債権者が担保を喪失し、又は減少させたことについて取引上の社会通念に照らして合理的な理由があると認められるときは、適用しない」(同条2項)。したがって、設問の場合、保証人は、その担保の減少に基づく免責を主張することはできない。
オ 正しい。最判平成7年6月23日は、債権者が担保権の設定を受けた担保を減少させたケースで、債権者と担保権設定者との間で担保保存義務免除の特約がある場合に、第三取得者は、免責の効果が生じていない状態の担保の負担がある物件を取得したことになり、債権者に対し、504条にによる免責の効果を主張することができない旨判示する。したがって、設問の場合、債権者に対して担保の減少に基づく自己の免責を主張することはできない。
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問題文正答率:50.00%
第20問 安全配慮義務に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- 安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償を請求する訴訟においては,原告は,安全配慮義務の内容を特定し,義務違反に該当する事実を主張立証する責任を負う。
- 雇用契約上の安全配慮義務違反により死亡した者の遺族が債務不履行に基づく損害賠償を請求する場合には,遺族固有の慰謝料を請求することはできない。
- 元請企業は,下請企業に雇用されている労働者に対しても,特別な社会的接触の関係に入ったものとして,信義則上,安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償債務を負うことがある。
- 安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償債務は,損害発生の時から履行遅滞に陥る。
- 国の公務員である運転者Aが公務遂行中に道路交通法上の通常の注意義務に違反して自動車事故を起こし,同乗していた国の公務員Bが負傷した場合,国は,Bに対し,安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償債務を負う。
選択肢
ア 正しい。最判昭和56年2月16日は、「国が、国家公務員に対して負担する安全配慮義務に違反し、右公務員の生命、健康等を侵害し、同人に損害を与えたことを理由として損害賠償を請求する訴訟において、右義務の内容を特定し、かつ、義務違反に該当する事実を主張・立証する責任は、国の義務違反を主張する原告にある」とする。したがって、設問の場合、原告は、安全配慮義務の内容を特定し、義務違反に該当する事実を主張立証する責任を負う。
イ 正しい。最判昭和55年12月18日は、安全配慮義務違反により死亡した者の遺族は、固有の慰謝料請求権を有しない旨判示している。したがって、設問の場合、遺族固有の慰謝料を請求することはできない。
ア 正しい。最判昭和56年2月16日は、「国が、国家公務員に対して負担する安全配慮義務に違反し、右公務員の生命、健康等を侵害し、同人に損害を与えたことを理由として損害賠償を請求する訴訟において、右義務の内容を特定し、かつ、義務違反に該当する事実を主張・立証する責任は、国の義務違反を主張する原告にある」とする。したがって、設問の場合、原告は、安全配慮義務の内容を特定し、義務違反に該当する事実を主張立証する責任を負う。
エ 誤り。最判昭和55年12月18日は、安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償債務は、期限の定めのない債務であり、債権者から履行の請求を受けた時に履行遅滞になる旨判示する。
イ 正しい。最判昭和55年12月18日は、安全配慮義務違反により死亡した者の遺族は、固有の慰謝料請求権を有しない旨判示している。したがって、設問の場合、遺族固有の慰謝料を請求することはできない。
ウ 正しい。最判平成3年4月11日は、「上告人の下請企業の労働者が上告人のD造船所で労務の提供をするに当たっては、いわゆる社外工として、上告人の管理する設備、工具等を用い、事実上上告人の指揮、監督を受けて稼働し、その作業内容も上告人の従業員である本工とほとんど同じであったというのであり、このような事実関係のもとにおいては、上告人は、下請企業の労働者との間に特別な社会的接触の関係に入ったもので、信義則上、右労働者に対し安全配慮義務を負う」とする。したがって、設問の場合、安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償債務を負うことがある。
ウ 正しい。最判平成3年4月11日は、「上告人の下請企業の労働者が上告人のD造船所で労務の提供をするに当たっては、いわゆる社外工として、上告人の管理する設備、工具等を用い、事実上上告人の指揮、監督を受けて稼働し、その作業内容も上告人の従業員である本工とほとんど同じであったというのであり、このような事実関係のもとにおいては、上告人は、下請企業の労働者との間に特別な社会的接触の関係に入ったもので、信義則上、右労働者に対し安全配慮義務を負う」とする。したがって、設問の場合、安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償債務を負うことがある。
オ 誤り。最判昭和58年5月27日は、設問と同様のケースで、運転者として道路交通法上当然に負うべき通常の注意義務を怠ったことにより、同乗していた者を死亡させたとしても、国に右同乗者に対する安全配慮義務違反があるとはいえない旨判示している。したがって、設問の場合、国は、Bに対し、安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償債務を負わない。
エ 誤り。最判昭和55年12月18日は、安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償債務は、期限の定めのない債務であり、債権者から履行の請求を受けた時に履行遅滞になる旨判示する。
オ 誤り。最判昭和58年5月27日は、設問と同様のケースで、運転者として道路交通法上当然に負うべき通常の注意義務を怠ったことにより、同乗していた者を死亡させたとしても、国に右同乗者に対する安全配慮義務違反があるとはいえない旨判示している。したがって、設問の場合、国は、Bに対し、安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償債務を負わない。
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問題文正答率:50.00%
第21問 法定利率及び約定利率に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- 利息を生ずべき債権について約定利率の定めがないときは,その利率は,最初に利息が生じた時点における法定利率による。
- 法定利率の割合は,3年を一期とするその期ごとに見直され,必ず変更される。
- 将来において負担すべき費用についての損害賠償の額を定める場合,その費用を負担すべき時までの利息相当額を法定利率により控除することはできない。
- 債務者が貸金返還債務の履行を遅滞した場合,債権者は,法定利率又は約定利率により算定された額を超える損害が生じたことを証明しても,当該損害の賠償を請求することができない。
- 金銭消費貸借契約の利息について法定利率を超える約定利率の定めがある場合,返済を遅滞した借主は,元本及び返済期日までの約定利率の割合による利息に加えて,当該金銭消費貸借契約を締結した時点における法定利率の割合による遅延損害金を返済期日の翌日から支払済みまで支払わなければならない。
選択肢
ア 正しい。「利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による」(404条1項)。
ウ 誤り。「将来において取得すべき利益についての損害賠償の額を定める場合において、その利益を取得すべき時までの利息相当額を控除するときは、その損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率により、これをする。2 将来において負担すべき費用についての損害賠償の額を定める場合において、その費用を負担すべき時までの利息相当額を控除するときも、前項と同様とする」(417条の2)。したがって、設問の場合、その費用を負担すべき時までの利息相当額を法定利率により控除することができる。
ア 正しい。「利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による」(404条1項)。
エ 正しい。最判昭和48年10月11日は、金銭を目的とする債務の履行遅滞による損害賠償の額は、約定又は法定の利率により算定し、それ以上の損害が発生したことを立証しても、その賠償を請求することはできない旨判示している。したがって、設問の場合、設問の場合、債権者は、法定利率又は約定利率により算定された額を超える損害が生じたことを証明しても、当該損害の賠償を請求することができない。
イ 誤り。「法定利率は、法務省令で定めるところにより、3年を1期とし、1期ごとに次項の規定により変動する」(404条3項)。「各期における法定利率は、この項の規定により法定利率に変動があった期のうち直近のもの(以下この項において「直近変動期」という。)における基準割合と当期における基準割合との差に相当する割合(その割合に1パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)を直近変動期における法定利率に加算し、又は減算した割合とする」(同条4項)。したがって、「必ず変更される」ということはない。
ウ 誤り。「将来において取得すべき利益についての損害賠償の額を定める場合において、その利益を取得すべき時までの利息相当額を控除するときは、その損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率により、これをする。2 将来において負担すべき費用についての損害賠償の額を定める場合において、その費用を負担すべき時までの利息相当額を控除するときも、前項と同様とする」(417条の2)。したがって、設問の場合、その費用を負担すべき時までの利息相当額を法定利率により控除することができる。
イ 誤り。「法定利率は、法務省令で定めるところにより、3年を1期とし、1期ごとに次項の規定により変動する」(404条3項)。「各期における法定利率は、この項の規定により法定利率に変動があった期のうち直近のもの(以下この項において「直近変動期」という。)における基準割合と当期における基準割合との差に相当する割合(その割合に1パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)を直近変動期における法定利率に加算し、又は減算した割合とする」(同条4項)。したがって、「必ず変更される」ということはない。
オ 誤り。「金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による」(419条1項)。したがって、設問の場合、借主は、約定利率の割合による遅延損害金を返済期日の翌日から支払済みまで支払わなければならない。
エ 正しい。最判昭和48年10月11日は、金銭を目的とする債務の履行遅滞による損害賠償の額は、約定又は法定の利率により算定し、それ以上の損害が発生したことを立証しても、その賠償を請求することはできない旨判示している。したがって、設問の場合、設問の場合、債権者は、法定利率又は約定利率により算定された額を超える損害が生じたことを証明しても、当該損害の賠償を請求することができない。
オ 誤り。「金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による」(419条1項)。したがって、設問の場合、借主は、約定利率の割合による遅延損害金を返済期日の翌日から支払済みまで支払わなければならない。
解説・コメント
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問題文正答率:50.00%
第22問 契約の成立に関する次のアからオまでの各記述のうち,契約が成立していないものの組合せとして正しいものは,後記1から5までのうちどれか。
- AがBに対し,承諾の期間を申込みから1週間と定めて撤回の権利の留保なく契約の申込みをし,その2日後に申込みを撤回したが,Bは申込みから5日後に承諾した。
- Aが対話中にその終了後も契約の申込みが効力を失わない旨を表示せずに対話者であるBに対して契約の申込みをしたところ,Bは対話終了後の翌日に承諾した。
- Bは,Aによる契約の申込みに対し,承諾の通知を発した後に死亡したが,Aは,その承諾の通知の到達前にB死亡の事実を知っていた。
- AがBに対して契約の申込みの通知を発した後に死亡したが,Aは自らが死亡したとすればその申込みは効力を有しない旨の意思を表示しておらず,BはA死亡の事実を知らずに承諾した。
- AがBに対して承諾の期間を申込みから1週間と定めて契約の申込みをしたところ,Bは申込みから10日後に承諾した。
選択肢
ア 成立している。「承諾の期間を定めてした申込みは、撤回することができない。ただし、申込者が撤回をする権利を留保したときは、この限りでない」(523条1項)。したがって、設問の場合、Bの承諾により、契約が成立している。
ウ 成立している。「意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、意思能力を喪失し、又は行為能力の制限を受けたときであっても、そのためにその効力を妨げられない」(97条3項)。したがって、設問の場合、Aが、承諾の通知の到達前にB死亡の事実を知っていても、契約は成立している。
ア 成立している。「承諾の期間を定めてした申込みは、撤回することができない。ただし、申込者が撤回をする権利を留保したときは、この限りでない」(523条1項)。したがって、設問の場合、Bの承諾により、契約が成立している。
オ 成立していない。「承諾の期間を定めてした申込みは、撤回することができない。ただし、申込者が撤回をする権利を留保したときは、この限りでない。2 申込者が前項の申込に対して同項の期間内に承諾の通知を受けなかったときは、その申込は、その効力を失う」(523条1項、2項)。したがって、設問の場合、Bは、Aが定めた承諾の期間を経過した後に承諾しているので、契約は成立していない。
イ 成立していない。「承諾の期間を定めないでした申込みは、申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまでは、撤回することができない」(525条1項本文)。「3 対話者に対してした第1項の申込みに対して対話が継続している間に申込者が承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失う。ただし、申込者が対話の終了後もその申込みが効力を失わない旨を表示したときは、この限りでない」(525条3項)。したがって、設問の場合、Bは対話終了後の翌日に承諾しているが、契約は成立していない。
エ 成立している。「申込者が申込みの通知を発した後に死亡し、意思能力を有しない常況にある者となり、又は行為能力の制限を受けた場合において、申込者がその事実が生じたとすればその申込みは効力を有しない旨の意思を表示していたとき、又はその相手方が承諾の通知を発するまでにその事実が生じたことを知ったときは、その申込みは、その効力を有しない」(526条)。したがって、設問の場合、Aが死亡したとすれば申込が効力を有しない旨の意思を表示しておらず、BはA死亡の事実を知らずに承諾しているので、契約は成立している。
イ 成立していない。「承諾の期間を定めないでした申込みは、申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまでは、撤回することができない」(525条1項本文)。「3 対話者に対してした第1項の申込みに対して対話が継続している間に申込者が承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失う。ただし、申込者が対話の終了後もその申込みが効力を失わない旨を表示したときは、この限りでない」(525条3項)。したがって、設問の場合、Bは対話終了後の翌日に承諾しているが、契約は成立していない。
オ 成立していない。「承諾の期間を定めてした申込みは、撤回することができない。ただし、申込者が撤回をする権利を留保したときは、この限りでない。2 申込者が前項の申込に対して同項の期間内に承諾の通知を受けなかったときは、その申込は、その効力を失う」(523条1項、2項)。したがって、設問の場合、Bは、Aが定めた承諾の期間を経過した後に承諾しているので、契約は成立していない。
ウ 成立している。「意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、意思能力を喪失し、又は行為能力の制限を受けたときであっても、そのためにその効力を妨げられない」(97条3項)。したがって、設問の場合、Aが、承諾の通知の到達前にB死亡の事実を知っていても、契約は成立している。
エ 成立している。「申込者が申込みの通知を発した後に死亡し、意思能力を有しない常況にある者となり、又は行為能力の制限を受けた場合において、申込者がその事実が生じたとすればその申込みは効力を有しない旨の意思を表示していたとき、又はその相手方が承諾の通知を発するまでにその事実が生じたことを知ったときは、その申込みは、その効力を有しない」(526条)。したがって、設問の場合、Aが死亡したとすれば申込が効力を有しない旨の意思を表示しておらず、BはA死亡の事実を知らずに承諾しているので、契約は成立している。
解説・コメント
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問題文正答率:50.00%
第23問 AB間においてAの所有する中古の時計甲の売買契約が締結された場合について述べた次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- 売買契約において,Aが甲を引き渡した日から1か月後にBが代金を支払うことが定められていた場合であっても,A及びBの債務の履行後に第三者Cの詐欺を理由として契約が取り消されたときの双方の原状回復義務は,同時履行の関係に立つ。
- 売買契約の締結時に甲がDの住所に存在していたときであっても,引渡しをすべき場所について別段の意思表示がない限り,甲の引渡場所はBの現在の住所である。
- Bが,Eとの間で,売買契約における買主たる地位をEに譲渡する旨の合意をした場合,Aの承諾の有無にかかわらず,買主たる地位はEに移転する。
- 売買契約において契約の締結時には出生していなかったFに甲の所有権を取得させることが定められた場合,売買契約は無効である。
- 売買契約において第三者Gに甲の所有権を取得させることが定められ,Gの受益の意思表示がされた後,Aが甲の引渡しを遅滞した場合,Bは,Gの承諾を得なければ,売買契約を解除することができない。
選択肢
ア 正しい。最判昭和47年9月7日は、売買契約が詐欺を理由として取り消されたケースで、当事者双方の原状回復義務は、533条の類推適用により同時履行の関係にある旨判示している。したがって、設問の場合、A及びBの原状回復義務は、同時履行の関係に立つ。
イ 誤り。「弁済をすべき場所について別段の意思表示がないときは、特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所ににおいて、その他の弁済は債権者の現在の住所において、それぞれしなければならない」(484条1項)。そして、中古の時計甲は特定物である。したがって、設問の場合、甲の引渡場所はDの住所である。
ア 正しい。最判昭和47年9月7日は、売買契約が詐欺を理由として取り消されたケースで、当事者双方の原状回復義務は、533条の類推適用により同時履行の関係にある旨判示している。したがって、設問の場合、A及びBの原状回復義務は、同時履行の関係に立つ。
オ 正しい。「2 前条の規定により第三者の権利が発生した後に、債務者がその第三者に対する債務を履行しない場合には、同条第1項の契約の相手方は、その第三者の承諾を得なければ、契約を解除することができない」(538条2項)。「契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者は、債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有する」(537条1項)。「3 第1項の場合において、第三者の権利は、その第三者が債務者に対して同項の契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する」(同条3項)。したがって、設問の場合、Bは、Gの承諾を得なければ、売買契約を解除することができない。
イ 誤り。「弁済をすべき場所について別段の意思表示がないときは、特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所ににおいて、その他の弁済は債権者の現在の住所において、それぞれしなければならない」(484条1項)。そして、中古の時計甲は特定物である。したがって、設問の場合、甲の引渡場所はDの住所である。
エ 誤り。「契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者は、債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有する。2 前項の契約は、その成立の時に第三者が現に存在しない場合又は第三者が特定していない場合であっても、そのためにその効力を妨げられない」(537条1項、2項)。そして、「その成立の時に第三者が現に存在しない場合」の例として、胎児がある。したがって、設問の場合、売買契約は無効ではない。
ウ 誤り。「契約の当事者の一方が第三者との間で契約上の地位を譲渡する旨の合意をした場合において、その契約の相手方がその譲渡を承諾したときは、契約上の地位は、その第三者に移転する」(539条の2)。したがって、設問の場合、Aの承諾が無い場合、買主たる地位はEに移転しない。
エ 誤り。「契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者は、債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有する。2 前項の契約は、その成立の時に第三者が現に存在しない場合又は第三者が特定していない場合であっても、そのためにその効力を妨げられない」(537条1項、2項)。そして、「その成立の時に第三者が現に存在しない場合」の例として、胎児がある。したがって、設問の場合、売買契約は無効ではない。
ウ 誤り。「契約の当事者の一方が第三者との間で契約上の地位を譲渡する旨の合意をした場合において、その契約の相手方がその譲渡を承諾したときは、契約上の地位は、その第三者に移転する」(539条の2)。したがって、設問の場合、Aの承諾が無い場合、買主たる地位はEに移転しない。
オ 正しい。「2 前条の規定により第三者の権利が発生した後に、債務者がその第三者に対する債務を履行しない場合には、同条第1項の契約の相手方は、その第三者の承諾を得なければ、契約を解除することができない」(538条2項)。「契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者は、債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有する」(537条1項)。「3 第1項の場合において、第三者の権利は、その第三者が債務者に対して同項の契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する」(同条3項)。したがって、設問の場合、Bは、Gの承諾を得なければ、売買契約を解除することができない。
解説・コメント
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問題文正答率:50.00%
第24問 他人の権利の売買に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- 売主が他人の権利を取得して買主に移転することができない場合,買主は,契約時にその権利が売主に属しないことを知っていたとしても,それにより損害賠償の請求を妨げられない。
- 売主が他人の権利を取得して買主に移転することができない場合,そのことについて売主の責めに帰すべき事由が存在しないときであっても,買主は売主に対して損害賠償請求をすることができる。
- 売買の目的である権利の一部が他人に属することにより,その権利の一部が買主に移転されず,履行の追完が不能である場合,そのことについて買主の責めに帰すべき事由が存在しないときは,買主は,催告をすることなく,直ちに代金の減額を請求することができる。
- 売主が他人の権利を取得して買主に移転することができない場合,買主は,契約時にその権利が売主に属しないことを知っていたときは,契約を解除することができない。
- 売主が他人の権利を取得して買主に移転することができない場合,買主は,善意の売主に対しては,当該権利が他人の権利であることを知った時から1年以内にその旨を通知しなければ,損害賠償の請求をすることができない。
選択肢
ア 正しい。「他人の権利(権利の一部が他人に属する場合におけるその権利の一部を含む。)を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う」(561条)。「債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる」(415条1項本文)。損害賠償の請求が認められるために、買主が善意であることは必要とされない。したがって、設問の場合、買主は、損害賠償の請求を妨げられない。
ウ 正しい。「前三条の規定は、売主が買主に移転した権利が契約の内容に適合しないものである場合(権利の一部が他人に属する場合においてその権利の一部を移転しないときを含む。)について準用する」(565条)。「前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、買主は、同項の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる。一 履行の追完が不能であるとき」(563条2項1号)。したがって、設問の場合、買主は、催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる。
ア 正しい。「他人の権利(権利の一部が他人に属する場合におけるその権利の一部を含む。)を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う」(561条)。「債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる」(415条1項本文)。買主が善意であることは必要とされない。したがって、設問の場合、買主は、損害賠償の請求を妨げられない。
エ 誤り。「当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行を催告し、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる」(541条本文)。契約の解除が認められるために、買主が善意であることは必要とされない。したがって、設問の場合、買主は、契約を解除することができる。
イ 誤り。「債務者がその債務の本旨に従った履行をし細霧の履ないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない」(415条1項)。したがって、設問の場合、売主の責めに帰すべき事由が存在しないときは、買主は売主に対して損害賠償請求をすることができない。
ウ 正しい。「前三条の規定は、売主が買主に移転した権利が契約の内容に適合しないものである場合(権利の一部が他人に属する場合においてその権利の一部を移転しないときを含む。)について準用する」(565条)。「前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、買主は、同項の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる。一 履行の追完が不能であるとき」(563条2項1号)。したがって、設問の場合、買主は、催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる。
イ 誤り。「債務者がその債務の本旨に従った履行をし細霧の履ないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない」(415条1項)。したがって、設問の場合、売主の責めに帰すべき事由が存在しないときは、買主は売主に対して損害賠償請求をすることができない。
オ 誤り。「債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。一 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。二 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき」(166条1項)。したがって、設問の場合、買主は、善意の売主に対しては、当該権利が他人の権利であることを知った時から1年以内にその旨を通知しなくても、損害賠償の請求をすることができる。なお、設問の場合、目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限に関する566条の適用はない。
エ 誤り。「当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行を催告し、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる」(541条本文)。契約の解除が認められるために、買主が善意であることは必要とされない。したがって、設問の場合、買主は、契約を解除することができる。
オ 誤り。「債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。一 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。二 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき」(166条1項)。したがって、設問の場合、買主は、善意の売主に対しては、当該権利が他人の権利であることを知った時から1年以内にその旨を通知しなくても、損害賠償の請求をすることができる。なお、設問の場合、目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限に関する566条の適用はない。
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問題文正答率:50.00%
第25問 賃貸借に関する次のアからオまでの各記述のうち,誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- 賃貸不動産が譲渡され,その不動産の賃貸人たる地位がその譲受人に移転したときは,譲渡人が負っていた賃借人に対する費用の償還に係る債務は,譲受人が承継する。
- 賃貸人は,賃借人の責めに帰すべき事由によって賃貸物の使用及び収益のために修繕が必要となったときであっても,その修繕をする義務を負う。
- 賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において,それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは,賃料は,その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて,減額される。
- 賃借人が適法に賃借物を転貸し,その後,賃貸人が賃借人との間の賃貸借を合意により解除した場合,賃貸人は,その解除の当時,賃借人の債務不履行による解除権を有していたときであっても,その合意解除をもって転借人に対抗することはできない。
- 賃貸借が終了した場合,賃借人は,通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗については,原状に復する義務を負わない。
選択肢
ア 正しい。「第1項又は第2項後段の規定により賃貸人たる地位が譲受人又はその承継人に移転したときは、第608条の規定による費用の償還に係る債務及び第622条の2第1項の規定による同項に規定する敷金の返還に係る債務は、譲受人又はその承継人が承継する」(605条の2第4項)。「不動産の譲渡人が賃貸人であるときは、その賃貸人たる地位は、賃借人の承諾を要しないで、譲渡人と譲受人との合意により、譲受人に移転させることができる。この場合においては、前条第3項及び第4項の規定を準用する」(605条の3)。したがって、設問の場合、譲渡人が負っていた賃借人に対する費用の償還に係る債務は、譲受人が承継する。
ウ 正しい。「賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される」(611条1項)。
ア 正しい。「第1項又は第2項後段の規定により賃貸人たる地位が譲受人又はその承継人に移転したときは、第608条の規定による費用の償還に係る債務及び第622条の2第1項の規定による同項に規定する敷金の返還に係る債務は、譲受人又はその承継人が承継する」(605条の2第4項)。「不動産の譲渡人が賃貸人であるときは、その賃貸人たる地位は、賃借人の承諾を要しないで、譲渡人と譲受人との合意により、譲受人に移転させることができる。この場合においては、前条第3項及び第4項の規定を準用する」(605条の3)。したがって、設問の場合、譲渡人が負っていた賃借人に対する費用の償還に係る債務は、譲受人が承継する。
エ 誤り。「賃借人が適法に賃借物を転貸した場合には、賃貸人は、賃借人との間の賃貸借を合意により解除したことをもって転借人に対抗することができない。ただし、その解除の当時、賃貸人が賃借人の債務不履行による解除権を有していたときは、この限りでない」(613条3項)。したがって、設問の場合、賃貸人は、合意解除をもって、転借人に対抗することができる。
イ 誤り。「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない」(606条1項)。
エ 誤り。「賃借人が適法に賃借物を転貸した場合には、賃貸人は、賃借人との間の賃貸借を合意により解除したことをもって転借人に対抗することができない。ただし、その解除の当時、賃貸人が賃借人の債務不履行による解除権を有していたときは、この限りでない」(613条3項)。したがって、設問の場合、賃貸人は、合意解除をもって、転借人に対抗することができる。
イ 誤り。「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない」(606条1項)。
オ 正しい。「賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損傷並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない」(621条)。
ウ 正しい。「賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される」(611条1項)。
オ 正しい。「賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損傷並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない」(621条)。
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問題文正答率:50.00%
第26問 委任に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- 委任を解除した者は,その解除の時期にかかわらず,相手方に対する損害賠償責任を負わない。
- 法律行為でない事務の委託については,法律行為の委任に関する民法の規定は準用されない。
- 受任者は,委任事務を処理するのに必要な費用につき,その費用を支払った後でなければ,これを委任者に請求することはできない。
- 委任者が死亡しても委任が終了しないこととする当事者間の特約がある場合,委任は,委任者が死亡しても当然には終了しない。
- 委任者が破産手続開始の決定を受けたことによって委任が終了した場合には,委任者は,破産手続開始の決定を受けたことを受任者に通知したとき,又は受任者が破産手続開始決定の事実を知っていたときでなければ,受任者に対し,委任の終了を主張することができない。
選択肢
ア 誤り。「2 前項の規定により委任の解除をした者は、次に掲げる場合には、相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。一 相手方に不利な時期に委任を解除したとき」(651条2項1号)。したがって、設問の場合、委任を解除した者は、その解除の時期によっては、相手方に対する損害賠償責任を負う。
イ 誤り。「この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する」(656条)。
ア 誤り。「2 前項の規定により委任の解除をした者は、次に掲げる場合には、相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。一 相手方に不利な時期に委任を解除したとき」(651条2項1号)。したがって、設問の場合、委任を解除した者は、その解除の時期によっては、相手方に対する損害賠償責任を負う。
オ 正しい。「委任の終了事由は、これを相手方に通知したとき、又は相手方がこれを知っていたときでなければ、これをもってその相手方に対抗することができない」(655条)したがって、設問の場合、委任者は、破産手続開始の決定を受けたことを受任者に通知したとき、又は受任者が破産手続開始決定の事実を知っていたときでなければ、受任者に対し、委任の終了を主張することができない。
イ 誤り。「この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する」(656条)。
ウ 誤り。「委任事務を処理するについて費用を要するときは、委任者は、受任者の請求により、その前払をしなければならない」(649条)。
ウ 誤り。「委任事務を処理するについて費用を要するときは、委任者は、受任者の請求により、その前払をしなければならない」(649条)。
エ 正しい。最判平成4年9月22日は、委任者が死亡した場合にも委任契約を終了させない旨の合意を有効とする旨判示している。したがって、設問の場合、委任は、委任者が死亡しても当然には終了しない。
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問題文正答率:50.00%
第27問 組合に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- 組合員は,組合財産に属する金銭債権につき,その持分に応じて単独で権利を行使することができる。
- 組合の業務の決定は,業務執行者があるときであっても,組合員の過半数をもってする。
- 組合の存続期間を定めた場合であっても,各組合員は,やむを得ない事由があるときは,脱退することができる。
- 組合の成立後に新たに加入した組合員は,その加入前に生じた組合の債務について弁済する責任を負わない。
- 組合員は,組合員の過半数の同意がある場合には,清算前に組合財産の分割を求めることができる。
選択肢
ア 誤り。「2 組合員は、組合財産である債権について、その持分についての権利を単独で行使することができない」(676条2項)。
イ 誤り。「3 前項の委任を受けた者(以下「業務執行者」という。)は、組合の業務を決定し、これを執行する。この場合において、業務執行者が数人あるときは、組合の業務は、業務執行者の過半数をもって決定し、各業務執行者がこれを執行する」(670条3項)。
ア 誤り。「2 組合員は、組合財産である債権について、その持分についての権利を単独で行使することができない」(676条2項)。
オ 誤り。「3 組合員は、清算前に組合財産の分割を求めることができない」(676条3項)。なお、大判大正2年6月28日は、組合員全員の合意があれば、清算前に組合財産を分割することができる旨判示している。
イ 誤り。「3 前項の委任を受けた者(以下「業務執行者」という。)は、組合の業務を決定し、これを執行する。この場合において、業務執行者が数人あるときは、組合の業務は、業務執行者の過半数をもって決定し、各業務執行者がこれを執行する」(670条3項)。
ウ 正しい。「2 組合の存続期間を定めた場合であっても、各組合員は、やむを得ない事由があるときは、脱退することができる」(678条2項)。
ウ 正しい。「2 組合の存続期間を定めた場合であっても、各組合員は、やむを得ない事由があるときは、脱退することができる」(678条2項)。
エ 正しい。「2 前項の規定により組合の成立後に加入した組合員は、その加入前に生じた組合の債務については、これを弁済する責任を負わない」(677条の2第2項)。
エ 正しい。「2 前項の規定により組合の成立後に加入した組合員は、その加入前に生じた組合の債務については、これを弁済する責任を負わない」(677条の2第2項)。
オ 誤り。「3 組合員は、清算前に組合財産の分割を求めることができない」(676条3項)。なお、大判大正2年6月28日は、組合員全員の合意があれば、清算前に組合財産を分割することができる旨判示している。
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問題文正答率:50.00%
第28問 不当利得に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- 所有者から寄託された動産を受寄者が売却し,買主に即時取得が成立した場合,買主は,寄託者に対し,不当利得返還義務を負わない。
- 第三者からだまし取った金銭を用いて債務が弁済された場合において,第三者からだまし取った金銭を用いて債務者が弁済をしたことを知らなかったことについて債権者に過失があるときは,債権者は,当該第三者に対して不当利得返還義務を負う。
- 過失により弁済期が到来したものと誤信をして,弁済期が到来する前に債務の弁済としての給付を行った者は,弁済期が到来するまでは,その給付したものの返還を求めることができる。
- 債務者が債権の受領権限がない者に対し弁済をした場合において,真の債権者がその受領者に対して不当利得返還請求をしたときは,その受領者は,弁済をした債務者に過失があったことを主張して,請求を拒絶することができる。
- 自らを債務者であると誤信して他人の債務を弁済した者は,債権者が善意でその債権を消滅時効により消滅させてしまった場合,債権者に対し弁済金の返還請求をすることができない。
選択肢
ア 正しい。「取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する」(192条)。即時取得は、譲渡人の動産の占有を信頼して取引をした者について、譲渡人の権利の有無とは無関係に権利を取得するというものである(公信の原則)。かかる趣旨から、即時取得が成立した場合、譲受人は不当利得返還義務を負わない。
ウ 誤り。「債務者は、弁済期にない債務の弁済として給付をしたときは、その給付したものの返還を請求することができない」(706条本文)。
ア 正しい。「取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する」(192条)。即時取得は、譲渡人の動産の占有を信頼して取引をした者について、譲渡人の権利の有無とは無関係に権利を取得するというものである(公信の原則)。かかる趣旨から、即時取得が成立した場合、譲受人は不当利得返還義務を負わない。
オ 正しい。「債務者でない者が錯誤によって債務の弁済をした場合において、債権者が善意で証書を滅失させ若しくは損傷し、担保を放棄し、又は時効によってその債権を失ったときは、その弁済をした者は、返還の請求をすることができない」(707条1項)。
イ 誤り。最判昭和49年9月26日は、債務者が騙取した金銭で債権者に弁済した場合に、債権者に弁済の受領について悪意又は重過失がある場合には、被騙取者に対する関係では、法律上の原因を欠き、不当利得となる旨判示している。したがって、設問の場合、債権者に悪意又は重過失は認められないので、当該第三者に対して不当利得返還義務を負わない。
ウ 誤り。「債務者は、弁済期にない債務の弁済として給付をしたときは、その給付したものの返還を請求することができない」(706条本文)。
イ 誤り。最判昭和49年9月26日は、債務者が騙取した金銭で債権者に弁済した場合に、債権者に弁済の受領について悪意又は重過失がある場合には、被騙取者に対する関係では、法律上の原因を欠き、不当利得となる旨判示している。したがって、設問の場合、債権者に悪意又は重過失は認められないので、当該第三者に対して不当利得返還義務を負わない。
エ 誤り。最判平成16年10月26日は、金融機関から、被相続人名義の預金の払戻しを受けた者が、他の相続人から提起された不当利得返還請求訴訟において、金融機関のなした払戻しは478条の弁済として有効ではなく、他の相続人は預金債権を有しており損失は生じていないとして、不当利得返還請求を争うことは、信義誠実の原則に反し許されない旨判示している。したがって、設問の場合、受領者は、弁済をした債務者に過失があったことを主張して、請求を拒絶することはできない。
エ 誤り。最判平成16年10月26日は、金融機関から、被相続人名義の預金の払戻しを受けた者が、他の相続人から提起された不当利得返還請求訴訟において、金融機関のなした払戻しは478条の弁済として有効ではなく、他の相続人は預金債権を有しており損失は生じていないとして、不当利得返還請求を争うことは、信義誠実の原則に反し許されない旨判示している。したがって、設問の場合、受領者は、弁済をした債務者に過失があったことを主張して、請求を拒絶することはできない。
オ 正しい。「債務者でない者が錯誤によって債務の弁済をした場合において、債権者が善意で証書を滅失させ若しくは損傷し、担保を放棄し、又は時効によってその債権を失ったときは、その弁済をした者は、返還の請求をすることができない」(707条1項)。
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問題文正答率:50.00%
第29問 不法行為に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- 金銭債権を有する者が,その債務者を負傷させたことにより不法行為に基づく損害賠償債務を負った場合,当該金銭債権を自働債権,損害賠償債権を受働債権とする相殺をもって債務者に対抗することはできない。
- 報道により他人の名誉を毀損した報道機関は,その報道が公共の利害に関する事実に係り,専ら公益を図ることに出たものであって,摘示した事実が真実であると信ずるにつき相当な理由があったとしても,その事実が真実であると証明できなかったときは,不法行為責任を負う。
- 子が他人の不法行為によって重傷を負った場合,その両親は,そのために子が生命を害されたときにも比肩すべき精神上の苦痛を受けたときは,自己の権利として加害者に慰謝料を請求することができる。
- 未成年者が責任能力を有し被害者に対する不法行為責任を負う場合であっても,その監督義務者に未成年者に対する監督義務違反があり,その義務違反と当該未成年者の不法行為によって生じた結果との間に相当因果関係が認められるときには,監督義務者は被害者に対する不法行為責任を負う。
- 使用者が被用者の加害行為につき使用者責任に基づいて第三者に損害賠償責任を負う場合,当該被用者は,加害行為につき故意又は重過失がない限り,当該第三者に対する損害賠償責任を負わない。
選択肢
ア 正しい。「次に掲げる債務の債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。ただし、その債権者がその債務に係る債権を他人から譲り受けたときは、この限りでない。一 悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務 二 人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務(前号に掲げるものを除く。)」(509条)。したがって、設問の場合、当該金銭債権を自働債権、損害賠償債権を受働債権とする相殺をもって債務者に対抗することはできない。
イ 誤り。最判昭和41年6月23日は、「民事上の不法行為たる名誉棄損については、その行為が公共の利害に関する事実に係りもっぱら公益を図る目的に出た場合には、適示された事実が真実であることが証明されたときは、右行為には違法性がなく、不法行為は成立しないものと解するのが相当であり、もし、右事実が真実であることが証明されなくても、その行為者においてその事実を真実と信ずるについて相当の理由があるときには、右行為には故意もしくは過失がなく、結局、不法行為は成立しない」とする。
ア 正しい。「次に掲げる債務の債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。ただし、その債権者がその債務に係る債権を他人から譲り受けたときは、この限りでない。一 悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務 二 人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務(前号に掲げるものを除く。)」(509条)。したがって、設問の場合、当該金銭債権を自働債権、損害賠償債権を受働債権とする相殺をもって債務者に対抗することはできない。
ウ 正しい。最判昭和33年8月5日は、不法行為により身体を害された者の母親が、そのために被害者が生命を害されたときに比肩しうべき苦痛を受けた場合には、自己の権利として慰謝料を請求することができる旨判示している。
イ 誤り。最判昭和41年6月23日は、「民事上の不法行為たる名誉棄損については、その行為が公共の利害に関する事実に係りもっぱら公益を図る目的に出た場合には、適示された事実が真実であることが証明されたときは、右行為には違法性がなく、不法行為は成立しないものと解するのが相当であり、もし、右事実が真実であることが証明されなくても、その行為者においてその事実を真実と信ずるについて相当の理由があるときには、右行為には故意もしくは過失がなく、結局、不法行為は成立しない」とする。
相当の理由があるときには、右行為には故意もしくは過失がなく、結局、不法行為は成立しない」とする。
オ 誤り。「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」(709条)。使用者責任(715条)が成立しても、被用者は、709条に基づく不法行為責任を負う。したがって、設問の場合、被用者は、加害行為につき故意又は重過失がなくても、当該第三者に対する損害賠償責任を負う場合がある。
ウ 正しい。最判昭和33年8月5日は、不法行為により身体を害された者の母親が、そのために被害者が生命を害されたときに比肩しうべき苦痛を受けた場合には、自己の権利として慰謝料を請求することができる旨判示している。
エ 正しい。最判昭和49年3月22日は、「未成年者が責任能力を有する場合であっても監督義務者の義務違反と当該未成年者の不法行為によって生じた結果との間に相当因果関係を認めうるときは、監督義務者につき民法709条に基づく不法行為が成立する」とする。
エ 正しい。最判昭和49年3月22日は、「未成年者が責任能力を有する場合であっても監督義務者の義務違反と当該未成年者の不法行為によって生じた結果との間に相当因果関係を認めうるときは、監督義務者につき民法709条に基づく不法行為が成立する」とする。
オ 誤り。「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」(709条)。使用者責任(715条)が成立しても、被用者は、709条に基づく不法行為責任を負う。したがって、設問の場合、被用者は、加害行為につき故意又は重過失がなくても、当該第三者に対する損害賠償責任を負う場合がある。
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第30問 普通養子縁組に関する次のアからオまでの各記述のうち,誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- 17歳の者が縁組をして養子となるには,その法定代理人の同意を得なければならない。
- 後見人が被後見人を養子とするには,家庭裁判所の許可を得なければならない。
- 配偶者のある者が配偶者の嫡出子を養子とする場合には,配偶者の同意を得ることを要しない。
- 自己の孫を養子とする場合には,その孫が未成年者であっても,家庭裁判所の許可を得ることを要しない。
- 縁組の当事者の一方が死亡した場合には,他方の当事者は,家庭裁判所の許可を得なければ離縁をすることができない。
選択肢
ア 誤り。「養子となる者が15歳未満であるときは、その法定代理人が、これに代わって、縁組の承諾をすることができる」(797条1項)。したがって、17歳の者が縁組をして養子となるには、その法定代理人の同意を得る必要はない。
ウ 誤り。「配偶者のある者が縁組をするには、その配偶者の同意を得なければならない。ただし、配偶者とともに縁組をする場合又は配偶者がその意思を表示することができない場合は、この限りでない」(796条)。
ア 誤り。「養子となる者が15歳未満であるときは、その法定代理人が、これに代わって、縁組の承諾をすることができる」(797条1項)。したがって、17歳の者が縁組をして養子となるには、その法定代理人の同意を得る必要はない。
オ 正しい。「縁組の当事者の一方が死亡した後に生存当事者が離縁をしようとするときは、家庭裁判所の許可を得て、これをすることができる」(811条6項)。
イ 正しい。「後見人が被後見人(未成年被後見人及び成年被後見人をいう。以下同じ。)を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。後見人の任務が終了した後、まだその管理の計算が終わらない間も、同様とする」(794条)。
ウ 誤り。「配偶者のある者が縁組をするには、その配偶者の同意を得なければならない。ただし、配偶者とともに縁組をする場合又は配偶者がその意思を表示することができない場合は、この限りでない」(796条)。
イ 正しい。「後見人が被後見人(未成年被後見人及び成年被後見人をいう。以下同じ。)を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。後見人の任務が終了した後、まだその管理の計算が終わらない間も、同様とする」(794条)。
エ 正しい。「未成年者を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。ただし、自己又は配偶者の直系卑属を養子とする場合は、この限りでない」(798条)。
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第31問 親権を行う者とその子との間及び子相互間の利益相反行為に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- 親権者が利益相反行為をした場合には,その行為は無権代理行為となる。
- 親権者が共同相続人である数人の子を代理して遺産分割の協議をすることは,利益相反行為に当たる。
- 親権者とその数人の子が共同相続人である場合に,親権者が自ら相続の放棄をすると同時にその子全員を代理して相続の放棄をすることは,利益相反行為に当たらない。
- 親権者がその子の名義で金銭を借り受け,その子が所有する不動産に抵当権を設定する場合であっても,親権者がその金銭を自らの用途に供する意図を有していたときには,利益相反行為に当たる。
- 父母が共に親権者である場合に,父とその子との利益が相反する行為をするには,母が親権者として単独でその子のための代理行為をする必要がある。
選択肢
ア 正しい。最判昭和46年4月20日は、「親権者が民法八二六条に違反して、親権者と子の利益相反行為につき法定代理人としてなした行為は民法一一三条所定の無権代理行為にあたる」とする。
ウ 正しい。最判昭和53年2月24日は、「後見人みずからの相続の放棄と被後見人全員を代理してするその相続の放棄が同時にされたと認められるときもまた、その行為の客観的性質からみて、後見人と被後見人との間においても、被後見人相互間においても、利益相反行為になるとはいえない」とする。
ア 正しい。最判昭和46年4月20日は、「親権者が民法八二六条に違反して、親権者と子の利益相反行為につき法定代理人としてなした行為は民法一一三条所定の無権代理行為にあたる」とする。
エ 誤り。最判昭和37年10月2日は、「親権者が子の法定代理人として、子の名において金員を借受け、その債務につき子の所有不動産の上に抵当権を設定することは、仮に借受金を親権者自身の用途に充当する意図であつても、かかる意図のあることのみでは、民法八二六条所定の利益相反する行為とはいえない」とする。
イ 正しい。最判昭和49年7月22日は、遺産分割の協議は、826条に規定する利益相反行為に該当するので、共同相続人中の数人の未成年者が、相続権を有しない一人の親権者の親権に服するときは、親権者により代理される未成年者を除く他の未成年者については、各別に選任された特別代理人により遺産分割の協議を行うことを要する旨判示している。
ウ 正しい。最判昭和53年2月24日は、「後見人みずからの相続の放棄と被後見人全員を代理してするその相続の放棄が同時にされたと認められるときもまた、その行為の客観的性質からみて、後見人と被後見人との間においても、被後見人相互間においても、利益相反行為になるとはいえない」とする。
イ 正しい。最判昭和49年7月22日は、遺産分割の協議は、826条に規定する利益相反行為に該当するので、共同相続人中の数人の未成年者が、相続権を有しない一人の親権者の親権に服するときは、親権者により代理される未成年者を除く他の未成年者については、各別に選任された特別代理人により遺産分割の協議を行うことを要する旨判示している。
オ 誤り。最判昭和35年2月25日は、「利益相反の関係にある親権者は特別代理人の選任を求め、特別代理人と利益相反の関係にない親権者と共同して代理行為をなすべきもの」とする。
エ 誤り。最判昭和37年10月2日は、「親権者が子の法定代理人として、子の名において金員を借受け、その債務につき子の所有不動産の上に抵当権を設定することは、仮に借受金を親権者自身の用途に充当する意図であつても、かかる意図のあることのみでは、民法八二六条所定の利益相反する行為とはいえない」とする。
オ 誤り。最判昭和35年2月25日は、「利益相反の関係にある親権者は特別代理人の選任を求め、特別代理人と利益相反の関係にない親権者と共同して代理行為をなすべきもの」とする。
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第32問 後見に関する次のアからオまでの各記述のうち,誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- 未成年後見人が数人ある場合,身上の監護に関する権限については,家庭裁判所は,職権で,各未成年後見人が単独で又は数人の未成年後見人が職務を分掌して,その権限を行使すべきことを定めることができる。
- 成年後見人が成年被後見人を代理してその居住している建物を売却する場合には,家庭裁判所の許可を得なければならない。
- 未成年被後見人Aが成年に達した後後見の計算の終了前にAと未成年後見人との間で契約を締結した場合,Aは,その契約を取り消すことができる。
- 成年後見人が成年被後見人を代理して預金の払戻しを受けるには,後見監督人があるときは,その同意を得なければならない。
- 任意後見契約が登記されている場合に家庭裁判所が後見開始の審判をするには,本人の利益のため特に必要があると認めるときでなければならない。
選択肢
ア 誤り。「未成年後見人が数人あるときは、家庭裁判所は、職権で、財産に関する権限について、各未成年後見人が単独で又は数人の未成年後見人が事務を分掌して、その権限を行使すべきことを定めることができる」(857条の2第3項)。職務を分掌して、その権限を行使すべきことを定めることができるのは、「財産に関する権限について」である。
ウ 正しい。「未成年被後見人が成年に達した後後見の計算の終了前に、その者と未成年後見人又はその相続人との間でした契約は、その者が取り消すことができる」(872条1項前段)。
ア 誤り。「未成年後見人が数人あるときは、家庭裁判所は、職権で、財産に関する権限について、各未成年後見人が単独で又は数人の未成年後見人が事務を分掌して、その権限を行使すべきことを定めることができる」(857条の2第3項)。職務を分掌して、その権限を行使すべきことを定めることができるのは、「財産に関する権限について」である。
エ 誤り。「後見人が、被後見人に代わって営業若しくは第一三条第一項各号に掲げる行為をし、又は未成年被後見人がこれをすることに同意するには、後見監督人があるときは、その同意を得なければならない。ただし、同項第一号に掲げる元本の領収については、この限りではない」(864条)。そして、預金の払戻しは、「元本の領収」に該当する。
イ 正しい。「成年後見人は、成年被後見人に代わって、その居住の用に供する建物又はその敷地について、売却、賃貸、賃貸借の解除又は抵当権の設定その他これらに準ずる処分をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。」(859条の3)。
ウ 正しい。「未成年被後見人が成年に達した後後見の計算の終了前に、その者と未成年後見人又はその相続人との間でした契約は、その者が取り消すことができる」(872条1項前段)。
イ 正しい。「成年後見人は、成年被後見人に代わって、その居住の用に供する建物又はその敷地について、売却、賃貸、賃貸借の解除又は抵当権の設定その他これらに準ずる処分をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。」(859条の3)。
オ 正しい。「「任意後見契約が登記されている場合には、家庭裁判所は、本人の利益のため特に必要があると認めるときに限り、後見開始の審判等をすることができる」(任意後見契約に関する法律10条1項)。
エ 誤り。「後見人が、被後見人に代わって営業若しくは第一三条第一項各号に掲げる行為をし、又は未成年被後見人がこれをすることに同意するには、後見監督人があるときは、その同意を得なければならない。ただし、同項第一号に掲げる元本の領収については、この限りではない」(864条)。そして、預金の払戻しは、「元本の領収」に該当する。
オ 正しい。「「任意後見契約が登記されている場合には、家庭裁判所は、本人の利益のため特に必要があると認めるときに限り、後見開始の審判等をすることができる」(任意後見契約に関する法律10条1項)。
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第33問 遺贈に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- 遺贈は,成年に達しなければ,することができない。
- 寄与分は,被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。
- 相続財産の一部の割合について包括遺贈を受けた者は,相続財産に属する債務を承継しない。
- Aが所有する甲不動産をBに生前贈与したが,所有権移転登記未了のうちにCに遺贈する旨の遺言をし,Aの死亡後にAからCへの遺贈を原因とする所有権移転登記がされた場合,CがAの相続人であっても,Bは,Cに対し,甲不動産の所有権の取得を対抗することができない。
- 遺贈は,遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは,その効力を生じない。
選択肢
ア 誤り。「十五歳に達した者は、遺言をすることができる」(961条)。「遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる」(964条)。遺贈とは、遺言者が、遺言により無償で財産を処分する行為をいう。
ウ 誤り。「包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する」(990条)。「相続人は、相続開始の時から被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」(896条本文)。「各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する」(899条)。したがって、相続財産の一部の割合について包括遺贈を受けた者は、包括遺贈を受けた割合に応じて、相続財産に属する債務を承継する。
ア 誤り。「十五歳に達した者は、遺言をすることができる」(961条)。「遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる」(964条)。遺贈とは、遺言者が、遺言により無償で財産を処分する行為をいう。
オ 正しい。「遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない」(994条1項)。
イ 正しい。「寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない」(904条の2第3項)。
ウ 誤り。「包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する」(990条)。「相続人は、相続開始の時から被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」(896条本文)。「各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する」(899条)。したがって、相続財産の一部の割合について包括遺贈を受けた者は、包括遺贈を受けた割合に応じて、相続財産に属する債務を承継する。
イ 正しい。「寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない」(904条の2第3項)。
エ 正しい。最判昭和46年11月16日は、「被相続人が、生前、その所有にかかる不動産を推定相続人の一人に贈与したが、その登記未了の間に、他の推定相続人に右不動産の特定遺贈をし、その後相続の開始があった場合、右贈与および遺贈による物権変動の優劣は、対抗要件たる登記の具備の有無をもって決すると解するのが相当であり、この場合、受贈者および受遺者が、相続人として、被相続人の権利義務を包括的に承継し、受贈者が遺贈の履行義務を、受遺者が贈与契約上の履行義務を承継することがあっても、このことは右の理を左右するに足りない」とする。したがって、設問の場合、CがAの相続人であっても、Bは、Cに対し、甲不動産の所有権の取得を対抗することができない。
エ 正しい。最判昭和46年11月16日は、「被相続人が、生前、その所有にかかる不動産を推定相続人の一人に贈与したが、その登記未了の間に、他の推定相続人に右不動産の特定遺贈をし、その後相続の開始があった場合、右贈与および遺贈による物権変動の優劣は、対抗要件たる登記の具備の有無をもって決すると解するのが相当であり、この場合、受贈者および受遺者が、相続人として、被相続人の権利義務を包括的に承継し、受贈者が遺贈の履行義務を、受遺者が贈与契約上の履行義務を承継することがあっても、このことは右の理を左右するに足りない」とする。したがって、設問の場合、CがAの相続人であっても、Bは、Cに対し、甲不動産の所有権の取得を対抗することができない。
オ 正しい。「遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない」(994条1項)。
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問題文正答率:50.00%
第34問 遺言の執行に関する次のアからオまでの各記述のうち,誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- 自筆証書遺言に係る遺言書を保管している相続人は,相続の開始を知った後,遅滞なく,遺言書を保管している旨を他の相続人に通知しなければならない。
- 遺言執行者がないとき,又はなくなったときは,家庭裁判所は,利害関係人の請求によって,これを選任することができる。
- 遺言執行者がある場合には,遺贈の履行は,遺言執行者のみが行うことができ,遺言者の相続人がこれを行うことはできない。
- 遺産分割方法の指定として遺産に属する預金債権の全部を相続人の一人に承継させる旨の遺言があったときは,遺言執行者は,遺言者がその遺言に別段の意思を表示した場合を除き,その預金の払戻しを請求することができる。
- 遺言執行者は,遺言者がその遺言に別段の意思を表示した場合を除き,やむを得ない事由がなければ,第三者にその任務を行わせることができない。
選択肢
ア 誤り。「遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない」(1004条1項前段)。遺言書を保管している相続人が、相続の開始を知った後、遅滞なく、遺言書を保管している旨を他の相続人に通知する必要がある旨の規定はない。
ウ 正しい。「遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができる」(1012条2項)。
ア 誤り。「遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない」(1004条1項前段)。遺言書を保管している相続人が、相続の開始を知った後、遅滞なく、遺言書を保管している旨を他の相続人に通知する必要がある旨の規定はない。
オ 誤り。「遺言執行者は、自己の責任で第三者にその任務を行わせることができる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う」(1016条1項)。
イ 正しい。「遺言執行者がないとき、又はなくなったときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求によって、これを選任することができる」(1010条)。
ウ 正しい。「遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができる」(1012条2項)。
イ 正しい。「遺言執行者がないとき、又はなくなったときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求によって、これを選任することができる」(1010条)。
エ 正しい。「2 遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言(以下「特定財産承継遺言」という。)があったときは、遺言執行者は、当該共同相続人が第899条の2第1項に規定する対抗要件を備えるために必要な行為をすることができる。3 前項の財産が預貯金債権である場合には、遺言執行者は、同項に規定する行為のほか、その預金又は貯金の払戻しの請求及びその預金又は貯金に係る契約の解約の申入れをすることができる。ただし、解約の申入れについては、その預貯金債権の全部が特定財産承継遺言の目的である場合に限る。4 前2項の規定にかかわらず、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは、その意思に従う」(1014条2項、3項、4項)。
エ 正しい。「2 遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言(以下「特定財産承継遺言」という。)があったときは、遺言執行者は、当該共同相続人が第899条の2第1項に規定する対抗要件を備えるために必要な行為をすることができる。3 前項の財産が預貯金債権である場合には、遺言執行者は、同項に規定する行為のほか、その預金又は貯金の払戻しの請求及びその預金又は貯金に係る契約の解約の申入れをすることができる。ただし、解約の申入れについては、その預貯金債権の全部が特定財産承継遺言の目的である場合に限る。4 前2項の規定にかかわらず、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは、その意思に従う」(1014条2項、3項、4項)。
オ 誤り。「遺言執行者は、自己の責任で第三者にその任務を行わせることができる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う」(1016条1項)。
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第35問 相続と贈与に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- 特別受益に当たる贈与の価額がその受贈者である相続人の具体的相続分の価額を超える場合,その相続人は,超過した価額に相当する財産を他の共同相続人に返還しなければならない。
- Aが,婚姻後21年が経過した時点で,Aとその配偶者Bが居住するA所有のマンション甲をBに贈与し,その後に死亡した場合,当該贈与については,その財産の価額を相続財産に算入することを要しない旨の意思表示(持戻し免除の意思表示)がされたものと推定される。
- 特別受益に当たる贈与は,地震により目的物が滅失した場合であっても,相続開始の時においてなお原状のままであるものとみなしてその価額を定める。
- 不動産の死因贈与の受贈者Aが贈与者Bの相続人である場合において,限定承認がされたときは,死因贈与に基づくBからAへの所有権移転登記が相続債権者Cによる差押登記よりも先にされたとしても,Aは,Cに対し,その不動産の所有権の取得を対抗することができない。
- 特別受益に当たる贈与は,当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってしたものでない場合,相続開始前の10年間にしたものに限り,遺留分を算定するための財産の価額に算入される。
選択肢
ア 誤り。「遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない」(903条2項)。超過した価額に相当する財産を他の共同相続人に返還する必要はない。
イ 正しい。「婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第1項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する」(903条4項)。したがって、設問の場合、AからBへの贈与については、その財産の価額を相続財産に算入することを要しない旨の意思表示(持戻し免除の意思表示)がされたものと推定される。なお、「第1項」は、特別受益の持戻しについての原則を規定している。
ア 誤り。「遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない」(903条2項)。超過した価額に相当する財産を他の共同相続人に返還する必要はない。
ウ 誤り。「前条に規定する贈与の価額は、受贈者の行為によって、その目的である財産が滅失し、又はその価格の増減があったときであっても、相続開始の時においてなお原状のままであるものとみなしてこれを定める」(904条)。設問にある地震などの不可抗力の場合は、「受贈者の行為によって」とは言えないので、相続開始の時においてなお原状のままであるものとみなされることはない。なお、「前条」の903条は、特別受益者の相続分について規定している。
イ 正しい。「婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第1項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する」(903条4項)。したがって、設問の場合、AからBへの贈与については、その財産の価額を相続財産に算入することを要しない旨の意思表示(持戻し免除の意思表示)がされたものと推定される。なお、「第1項」は、特別受益の持戻しについての原則を規定している。
オ 正しい。「贈与は、相続開始前の1年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与したときは、1年前の日より前にしたものについても、同様とする」(1044条1項)。「相続人に対する贈与についての第1項の規定の適用については、同項中「1年」とあるのは「10年」と、「価額」とあるのは「価額(婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限る。)」とする」(同条3項)。
ウ 誤り。「前条に規定する贈与の価額は、受贈者の行為によって、その目的である財産が滅失し、又はその価格の増減があったときであっても、相続開始の時においてなお原状のままであるものとみなしてこれを定める」(904条)。設問にある地震などの不可抗力の場合は、「受贈者の行為によって」とは言えないので、相続開始の時においてなお原状のままであるものとみなされることはない。なお、「前条」の903条は、特別受益者の相続分について規定している。
エ 正しい。最判平成10年2月13日は、「不動産の死因贈与の受贈者が贈与者の相続人である場合において、限定承認がされたときは、死因贈与に基づく限定承認者への所有権移転登記が相続債権者による差押登記よりも先にされたとしても、信義則に照らし、限定承認者は相続債権者に対して不動産の所有権取得を対抗することができない」とする。
エ 正しい。最判平成10年2月13日は、「不動産の死因贈与の受贈者が贈与者の相続人である場合において、限定承認がされたときは、死因贈与に基づく限定承認者への所有権移転登記が相続債権者による差押登記よりも先にされたとしても、信義則に照らし、限定承認者は相続債権者に対して不動産の所有権取得を対抗することができない」とする。
オ 正しい。「贈与は、相続開始前の1年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与したときは、1年前の日より前にしたものについても、同様とする」(1044条1項)。「相続人に対する贈与についての第1項の規定の適用については、同項中「1年」とあるのは「10年」と、「価額」とあるのは「価額(婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限る。)」とする」(同条3項)。
解説・コメント
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問題文正答率:50.00%
第36問 承継人に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- 錯誤によって取り消すことができる行為は,錯誤による意思表示をした者の契約上の地位の承継人も,取り消すことができる。
- 時効の完成猶予の効力は,その事由が生じた当事者の承継人に対しては生じない。
- 占有者の包括承継人は,取得時効に関して,自己の占有のみを主張することもできる。
- 共有者の一人であるAが共有物について他の共有者であるBに対して有する債権は,Bの特定承継人に対しては,行使することができない。
- 遺留分権利者の承継人は,遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。
選択肢
ア 正しい。「錯誤、詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる」(120条2項)。
ウ 正しい。「占有者の承継人は、その選択に従い、自己の占有のみを主張し、又は自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張することができる」(187条1項)。
ア 正しい。「錯誤、詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる」(120条2項)。
オ 正しい。「遺留分権利者及びその承継人は、受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下この章において同じ。)又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる」(1046条1項)。
イ 誤り。「第一四七条又は第一四八条の規定による時効の完成猶予又は更新は、完成猶予又は更新の事由が生じた当事者及びその承継人の間においてのみ、その効力を有する」(153条1項)。
エ 誤り。「共有者の一人が共有物について他の共有者に対して有する債権は、その特定承継人に対しても行使することができる」(254条)。
イ 誤り。「第一四七条又は第一四八条の規定による時効の完成猶予又は更新は、完成猶予又は更新の事由が生じた当事者及びその承継人の間においてのみ、その効力を有する」(153条1項)。
オ 正しい。「遺留分権利者及びその承継人は、受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下この章において同じ。)又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる」(1046条1項)。
ウ 正しい。「占有者の承継人は、その選択に従い、自己の占有のみを主張し、又は自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張することができる」(187条1項)。
エ 誤り。「共有者の一人が共有物について他の共有者に対して有する債権は、その特定承継人に対しても行使することができる」(254条)。
解説・コメント
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問題文正答率:50.00%
第37問 撤回に関する次のアからオまでの各記述のうち,誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- 選択債権について債務者が選択権行使の意思表示をした場合,その意思表示は,債権の弁済期前であっても,債権者の承諾を得なければ,撤回することができない。
- 解除の意思表示は,撤回することができない。
- 相続の放棄は,相続の承認又は放棄をすべき期間内は,撤回することができる。
- 遺贈の承認は,遺贈義務者が履行に着手するまでは,撤回することができる。
- 遺言者は,その遺言を撤回する権利を放棄することができない。
選択肢
ア 正しい。「前条の選択権は、相手方に対する意思表示によって行使する。2 前項の意思表示は、相手方の承諾を得なければ、撤回することができない」(407条)。なお、「前条」は、選択債権における選択権の帰属についての規定である。
イ 正しい。「契約又は法律の規定により当事者の一方が解除権を有するときは、その解除は、相手方に対する意思表示によってする。2 前項の意思表示は、撤回することができない」(540条)。
ア 正しい。「前条の選択権は、相手方に対する意思表示によって行使する。2 前項の意思表示は、相手方の承諾を得なければ、撤回することができない」(407条)。なお、「前条」は、選択債権における選択権の帰属についての規定である。
オ 正しい。「遺言者は、その遺言を撤回する権利を放棄することができない」(1026条)。
イ 正しい。「契約又は法律の規定により当事者の一方が解除権を有するときは、その解除は、相手方に対する意思表示によってする。2 前項の意思表示は、撤回することができない」(540条)。
ウ 誤り。「相続の承認及び放棄は、第九一五条第一項の期間内でも、撤回することができない」(919条1項)。なお、「第九一五条第一項」は、相続の承認又は放棄をすべき期間についての規定である。
ウ 誤り。「相続の承認及び放棄は、第九一五条第一項の期間内でも、撤回することができない」(919条1項)。なお、「第九一五条第一項」は、相続の承認又は放棄をすべき期間についての規定である。
エ 誤り。「遺贈の承認及び放棄は、撤回することができない」(989条1項)。
エ 誤り。「遺贈の承認及び放棄は、撤回することができない」(989条1項)。
オ 正しい。「遺言者は、その遺言を撤回する権利を放棄することができない」(1026条)。
解説・コメント
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ア 誤り。「精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、4親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判をすることができる。ただし、第7条又は第11条に規定する原因がある者については、この限りではない」(第15条1項)。したがって、同条ただし書により、精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分で保佐開始の原因がある者については、補助開始の審判をすることはできない。
イ 誤り。「本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない」(15条2項)。「家庭裁判所が相当と認める場合を除き」という規定はない。